文字 

(2)大腸の新しい検査法 「CTコロノグラフィー」 倉敷成人病センター放射線技術科主任 木下琢実

木下琢実放射線技術科主任

新しい検査法「CTコロノグラフィー」

 近年、大腸がんによる死亡者数および罹患(りかん)率が男女とも増加傾向にありますが、大腸がん検診受診率は低迷しています。受診率低迷にはさまざまな要因が考えられますが、その中でも「前処置が苦痛である」「怖い」などの心理的な理由で検査を敬遠される患者さんも少なからず見受けられます。

 今までの大腸がんの検査といえば大腸内視鏡や注腸エックス線検査が主流でしたが、当院では大腸がん検診の選択肢の一つとして、患者さんのニーズに応える目的で、苦痛が少なく客観的で再現性の高い検査としてCTコロノグラフィー(大腸CT検査)を導入しました。

 CTコロノグラフィーは大腸を炭酸ガスで拡張させてCT撮影を行い、画像処理することで、内視鏡を挿入しなくても内視鏡検査や注腸エックス線検査と同じような大腸の画像を作成し、観察・診断する検査方法です。

 検査の流れとしては、健診などで便潜血陽性の結果が出た場合、病院を一度受診していただき、検査の予約から前処置の説明を受けていただく必要があります。

 前処置は患者さんにとって一番心配な部分でもあると思われますが、当院ではCTコロノグラフィー専用食と清涼飲料水(または水かお茶)、下剤、ガストログラフィンを前日から服用してもらいます。検査を施行した患者さんからは検査食がおいしかったと評価をいただき、概ね前処置は楽だったと感想をいただいています。

 CTコロノグラフィーにおける前処置は、偽陽性や偽陰性の原因となる残便や残液の無い状態にするのが理想です。そのため便に色を付ける薬(ガストログラフィン)を飲んでいただきます。これは残便や残液が残っていた場合でも画像処理で消すことができるため死角がなくなり、病変の見逃しが減少します。

 またCTで撮影を行うことにより、大腸だけでなく他の臓器も観察することができ、装置の進化により被ばく線量も注腸エックス線検査に比べ半分の線量で行うことができます。最新の機器ではさらに少ない線量の報告もあります。ただし、メリットだけではありません。5ミリ以下のポリープは6ミリ以上のポリープに比べて検出率が落ちることや、病変が見つかった場合に、その場で切除などの処置を行うことができない点がデメリットとして挙げられます。

 まだ全国的にも検査を行う施設が多くない現状で検査の標準化や精度向上など課題がありますが、少しでもCTコロノグラフィーで地域の人々に貢献でき、早期大腸がんの発見に寄与できるよう普及させていきたいと思っています。



 倉敷成人病センター((電)086―422―2111)

きのした・たくみ 倉敷南高、鈴鹿医療科学大卒。2001年倉敷成人病センター勤務。診療放射線技師。主にCTとシステム担当。X線CT認定技師。肺がんCT認定技師。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年07月06日 更新)

ページトップへ

ページトップへ