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内視鏡ロボで自家腎移植 岡山大病院、国内初手術へ

内視鏡ロボット「ダ・ビンチ」と手術を担当する荒木講師

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)は、同じ患者の体内で腎臓の場所を移し替える「自家腎移植」を、内視鏡ロボットを使って近く行う方向で検討している。国内では初となる手術で、腎臓の切除から再移植までを腹腔(ふくくう)内で実施。傷口は腹部に数カ所開けた穴だけで身体への負担が軽く、手術の安全性も高いのが特徴。

 移植手術のノウハウに加え、再移植時の血管縫合などで一般的な切除手術より複雑で高度なロボット操作技術が求められるため、世界でも2014年に米国で1例しか行われていない。

 生体腎移植を手掛ける同病院泌尿器科(那須保友教授)は、内視鏡ロボット「ダ・ビンチ」を10年11月に導入後、前立腺がんの全摘出手術を約400例実施しており、ロボットを使った自家腎移植に踏み切る環境が整ったと判断した。

 対象は子宮、大腸、尿管周囲を手術した際に虚血などで起こる尿管狭窄(きょうさく)症や、そのままでは腫瘍を取り除くのが難しい腎臓がんなど、いったん腎臓を切除して別の場所に戻す必要のある疾患。手術は、3次元画像を確認しながら手元のレバーを操り、患者の腹部に開けた穴から入れた器具を動かす。

 従来の開腹手術は腎臓の摘出と再移植でそれぞれ20~30センチの切開が必要で、手術も8~16時間かかるという。ロボット手術は傷口が小さく、時間も6時間前後に短縮できる。穴から入れた器具を手で動かすこれまでの腹腔鏡手術と比べても、器具の動きがより正確で細い血管の縫合も素早く安全に行え、出血も少ないという。

 担当する荒木元朗講師は「ロボット手術により、身体的な負担が大きく敬遠されがちな自家腎移植を治療の選択肢として患者に提示できる。治療しなければ腎臓を失う人もおり、積極的に取り組みたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年08月30日 更新)

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