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リンパ球のがん免疫機能 アスベストが抑制 大槻川崎医大教授ら初実証 中皮腫発症予防へ期待

大槻剛巳教授

 川崎医科大の大槻剛巳教授(環境免疫学)らのグループは、がんの一種「中皮腫」の原因とされるアスベスト(石綿)が、リンパ球に異常を生じさせ、がんに対する免疫機能を低下させることを、ヒトの細胞を使った実験で突き止めた。十分解明されていない中皮腫の発症に免疫機能がかかわっていることを初めて明らかにした成果。予防法開発へのステップとして期待される。

 十四日から二日間、倉敷市芸文館で開催される日本免疫毒性学会と日本産業衛生学会「アレルギー・免疫毒性研究会」で発表する。

 大槻教授と西村泰光講師らは、これまでの研究で、スラグ(鉱滓(こうさい))などに含まれるケイ酸が人体に入ると、関節リウマチなど免疫異常による疾患が起きることを確認。アスベストがケイ酸の化合物である点に着目し影響を調べた。

 実験は、健康なヒトのリンパ球に約一年間にわたって微量のアスベストを毎日浴びせ続けた。その結果、浴びせていないリンパ球と比べ、「インターロイキン10」というタンパク質と、「Bcl―2」という分子が大量に認められた。

 インターロイキン10は、がんを見つけて攻撃する「T細胞」の活動を抑え、Bcl―2は細胞の自滅(アポトーシス)を起こりにくくする働きがある。

 アスベストを長期間浴びた結果、リンパ球がインターロイキン10を大量につくりだす性質に変化、さらに自滅せず増え続け、がんに対する免疫機能が弱まるとみられる。

 大槻教授は「アスベストを浴びていても何らかの治療でリンパ球の機能を正常に保てれば、がんを未然に防いだり、進行を遅らせることが可能だと思う。異常は採血で判断でき、早期診断法の確立にもつなげたい」と話している。


画期的な研究

 中皮腫に詳しい岸本卓巳岡山労災病院副院長の話 中皮腫の発がんメカニズムの全容解明につながるこれまでにない画期的な研究だ。今回の成果を応用することで、将来的には発症予測も可能になるだろう。


ズーム

 アスベスト 胸膜などにできるがん「中皮腫」の主な原因で、肺がんを引き起こすともされる。建築資材などに使用されたが、国は1995年に毒性が強い青石綿、茶石綿、2004年には発がん性が弱い白石綿の使用を禁止した。ただ、潜伏期間は約40年と長く、使用量の推移などから、患者数は2020年から10年間ほどがピークになるといわれる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年09月14日 更新)

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