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「極小折り鶴」で幅広い評価 倉敷中央病院のユニーク研修医採用試験

人材開発センター長
福岡 敏雄
1986年大阪大学医学部卒業。倉敷中央病院で循環器内科医や名古屋大学で教員として集中治療部、救急部、救急・集中治療医学講座などを担当。2013年4月に、同病院救命救急センターセンター長、2014年4月から現職。

“極小”折り鶴のサンプル

ユニーク試験の意義を説明する福岡センター長

 極小の折り鶴を15分以内に作れ-。倉敷中央病院(倉敷市美和)が2016年度新卒研修医採用試験に、全国的にもユニークな実技試験を導入した。狙いや応募した学生の反応などを、試験を考案した同病院の福岡敏雄・人材開発センター長に聞いた。

-導入の背景は

 これまでの筆記試験(小論文と英語)と面接だけでは、学生の十分良い所に気づけなかったという実感があった。医療現場では、非常に難しい判断や技術が問われる局面にしばしば出くわすことがあり、そのときにどう取り組むか問われる。手先の器用さをみるというより、幅広い人物評価につながると考えた。地方病院は優秀な人材を確保するのに頭を悩ませている。倉敷中央病院は研修医の定員が32人だが、ここ7年は満たしていない。学生に病院をアピールするという点も期待した。

-学生らの反応は

 興味を持って受け止めてくれるか、こんなふざけた試験をやるのかと反発されるか、2通りの反応があると予想していた。ふたを開ければ、圧倒的に前者が多く、ユニークで面白い取り組みという評価で安心した。

-7月に東京で課題の実現可能性を試す実技トライアウトを行った上で、8月には採用試験で実際に学生にやってもらった

 トライアウトでは、1.5センチ四方の折り紙を使った折り鶴、バラバラにしたタマムシの標本の組み立て、ごはん一粒大のすしの3種類に挑戦してもらった。昆虫に馴染みがなく、胴体の裏表が分からない学生もいた。すし作りは受験する50人分を用意するのが難しいという理由で、採用試験には折り鶴をしてもらうことにした。1.5センチ四方に加えて、3センチ四方の紙を2枚ずつ用意し、15分の制限時間で折ってもらった。

-折り鶴はどのように活用したか

 面接の導入での会話で、折った印象や取り組んだ感想を聞いた。全部折れた人もいれば、そうでない人もいた。課題に対する熱心さやひたむきさ、どのような工夫をしたのかなどを聞き評価した。人間性を見るにはいいツールになった。もちろん、折れないから採用しないということは言っていない。筆記と面接では見られない一面を見たいと思ってやっている。

-今回の試験の成果は
 
 病院側が「優秀な人を画一化していない。より幅広い人材が欲しい」という明確なメッセージを発信できた。最終的に、折り鶴が上手に折れても、いい医師になるとは限らない。9年間で250人超の研修医に接しているが、試験で測れない部分が大きい。来年度も、ぜひやりたいというのが院内全体の雰囲気だ。



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※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年10月05日 更新)

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