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(1)関節リウマチってどんな病気? 倉敷スイートホスピタル副院長・リウマチセンター長 棗田将光

棗田将光副院長

 関節リウマチは手や足、ひざやひじなどの関節が痛んだり、腫れたりする病気です。日本では約70万人が罹(り)患されており、好発年齢は30歳ごろから、50歳の閉経前後の女性に多い病気です。初期症状としては、関節が痛い、関節の腫れ、朝起きた時の手足のこわばりなどがあります。

 関節リウマチは滑膜(関節を包んでいる膜)に炎症が起こり、滑膜が増殖し関節軟骨や骨を溶かして破壊していく病気です(図1)。その原因はまだはっきりわかっていませんが、遺伝的要因のほか、喫煙や歯周病などの環境的要因があるといわれ、自分の身体を自分が攻撃していくという、自己免疫疾患の一つです(図2)。

 関節の腫れは、初期では紡錘(すい)状の腫れから始まることが多く、適切な治療がなされていないと疼(とう)痛が続くばかりか、手足が変形し、日常生活に支障をきたします。

▼リウマチって体の中で何が起こっているの?

 通常、体の中に細菌やウイルスなどの異物が入ると、抗原提示細胞という細胞が、T細胞にその情報を知らせます。T細胞は炎症性サイトカインIL―6やTNFαというものを産生して、B細胞やマクロファージという細胞に命令を出します。このB細胞やマクロファージはその命令によりさらに炎症性サイトカインを産生していき、細菌などの異物をやっつけます(図3)。

 関節リウマチでは、抗原提示細胞がT細胞に誤った情報を伝えます。T細胞は細菌が体の中に入った時と同じようにB細胞やマクロファージに命令を出して炎症性サイトカインを産生し、自分の体(関節)を異物として認識し、自分の関節を攻撃して壊してしまいます(図4)。

▼診断と治療は? 

 関節の痛みをきたす病気は痛風や変形性関節症などたくさんあります。関節リウマチの診断は、視診(関節の腫れを目で見る)や触診(関節の熱さや痛みを手で診察する)のほか、レントゲンや血液検査などで確定診断を行います。そのほかMRIや関節超音波などを用いて、診断された関節リウマチの勢い(病勢)や治療効果の判定も行います。

 約10年前までは、関節リウマチの患者の平均寿命は一般の人の平均寿命と比べて、約10年短いと言われていました。しかし、2003年以降、関節リウマチ治療薬として生物学的製剤という新薬が次々に登場し、関節破壊の進行を劇的に抑えることができるようになり、現在では平均寿命や健康寿命の差も着実に少なくなってきています。発病早期より専門医による適切な治療がなされれば、痛みや関節変形のない日常生活が行えるようになります。

 関節リウマチは主に関節が侵される疾患です。内科的疾患であると同時に、関節変形が強くなれば手術も必要な場合があり、整形外科的疾患であるとも言えます。日常生活動作の支障が大きくなれば社会的サポートも必要になります。内科医・整形外科医のほか、看護師やリハビリテーションスタッフ、医療ソーシャルワーカーといった多職種によるチーム連携によって、QOL(生活の質)向上が得られます。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 なつめだ・まさみつ 広島県・修道高、徳島大医学部卒。岡山大医学部第三内科、尾道市民病院などを経て1991年倉敷広済病院(現倉敷スイートホスピタル)。2008年副院長、12年リウマチセンター長兼務。日本リウマチ学会評議員・専門医・指導医、日本臨床リウマチ学会評議員、日本内科学会認定内科医、総合内科専門医。岡山大医学部臨床教授。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年10月05日 更新)

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