文字 
  • ホーム
  • 岡山のニュース
  • 「子育てタクシー」順調に運行拡大  リポート2006 発祥の地・高松に全国協発足 サービス維持課題

「子育てタクシー」順調に運行拡大  リポート2006 発祥の地・高松に全国協発足 サービス維持課題

研修を受けた乗務員が子どもの目線でサービスにあたる子育てタクシーの試乗会=6月、サンポート高松

 乳幼児を連れた外出や子どもの送迎にあたる「子育てタクシー」。タクシー会社と子育て支援NPOが連携し、香川県で二年前に産声を上げた。取り組みは広がり、県外でも運行事業者が増え、六月には「全国子育てタクシー協会」(事務局・高松市)も発足。乗務員研修などを通し「安全・安心」なサービスの普及を目指している。

 高松市の育児支援NPO「わははネット」(中橋恵美子理事長)の「子育て広場」(同市)。タクシー乗務員木下富雄さん(44)が子どもたちと触れ合う。木下さんは全国子育てタクシー協会の保育実習を受けている。

 協会は保育実習のほか、「乳児・幼児・学齢期の保育」「チャイルドシート装着」などの講義を設定。これらを受講すれば、子育てタクシー乗務員として認定される。

母親の声採用

 「子どもを抱いている時は荷物を運ぶのを手伝ってほしい」「子連れでも安心して乗れるタクシーを」…。母親の声を受け、わははネットが「子育てに優しいタクシー」を企画。協力したのは高松市の花園タクシー。同社の鎌野実知子社長自身が二児の母でもあった。スタートは二〇〇四年七月のことだ。

 運行にあたっても母親の声を取り入れた。玄関先まで荷物を運び、乗降やベビーカー開閉を手伝う。保育園や学校の送迎などでは子どもだけでも乗車でき、チャイルドシートも用意。何よりも子育てに関する研修を受けた乗務員が担当するのがポイントだ。

 「ちょっと手を貸してくれることが育児の大きな支え」と主婦久保克美さん(37)=高松市。母親の評判が広がり、県内では準備中も含め運行は十一社。長崎、山口県で始まり、愛媛県、大阪府でも予定されている。

 渡辺顕一郎四国学院大教授(児童福祉論)は「生活圏の拡大に、駅や道路のバリアフリー化などの交通事情が追い付いていないのが現状。共働きの増加や核家族化などで子育て環境が変化する中、不便さを感じている母親のニーズに合致した」と評価する。

利益ではない

 課題は質の維持。協会設立の狙いもこの点にある。「サービスの質を保証するため全国組織が必要だった」とわははネットの中橋理事長(協会事務局長)。協会は運行ガイドラインを策定。認定試験・更新制度の導入も検討している。

 子育て支援とともに「タクシー業界の活性化」への期待もある。国土交通省旅客課の岡野まさ子総括課長補佐は、母親に喜ばれることで「乗務員が誇りを持ち、新規の需要開拓にもなる。支援していきたい」と注目。国交省は〇七年度予算の概算要求で、育児支援タクシー運転者の教育体制整備費も盛り込んだ。

 乗務員の手間がかかることから、協会にはタクシー会社から「もうかるのか」との問い合わせもあるが、協会会長に就任した鎌野社長はこう答えているという。

 「利益のためではない。親切も業務の一部。利用者の信頼が大きな財産になる」


ズーム

 子育てタクシー 利用は協会加盟各社への登録制。利用対象者は妊婦、0―15歳の子どもおよび保護者。料金は基本的に通常のメーター料金。「子育てタクシー」の名称は商標登録中。協会には6道府県の27社が加盟している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年09月17日 更新)

タグ: 福祉子供

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ