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<ポイントインタビュー>潰瘍治療用に繁殖 ハエの幼虫使った事業とは  岡山大大学院(岡山市)・三井秀也医師 会社設立 安価販売目指す

「マゴット治療を普及させ、下肢切断の危機にある多くの患者を救いたい」

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科助手の三井秀也医師(50)が、潰瘍(かいよう)治療に使う医療用マゴット(ハエの幼虫)を繁殖させ、医療機関に販売するベンチャー企業「JAPAN MAGGOT COMPANY(ジャパン マゴット カンパニー)」を4月に設立した。その狙いや事業展開などを聞いた。

 ―ハエの幼虫を用いた潰瘍治療は、どのようなものか。

 「糖尿病などで足の血流が悪くなると皮膚にできた傷が悪化し潰瘍になる。抗生物質で治療するが耐性菌が出現し、なかなか治らない場合もある。最悪の場合は足を切断する。これに対し、近年、欧米などで注目を集めているのがマゴットを使った治療方法。幼虫が壊死(えし)した組織を溶かして吸い取り、殺菌もする。これまで八人を治療したが、いずれも足を切断せず、歩けるようになり、良好な結果が出ている」

 ―なぜ、事業化を。

 「従来の治療では幼虫を二週間に一度、豪州から輸入しており、一回の治療にかかるコストは十数万円。標準的な治療では三週間で六回の幼虫を投入する必要があり、総額は百万円弱。長い輸送時間で弱る幼虫も多く、『何とか国内で安くて元気なマゴットを生産できないか』と考えた」

 ―岡山県産業振興財団が昨年十一月に開いた「ベンチャー・ビジネスプランコンテスト」で最優秀賞(賞金五百万円)を獲得した。具体的な事業展開は。

 「賞金は飼育装置の購入や創業資金に充てた。資本金は三百万円。従業員二人を雇い、ヒロズキンバエというクロバエを飼育装置で繁殖させ、特殊な方法で無菌化。医療機関からの依頼があれば、宅配便で送っている。価格は六回の治療分(約六百匹)で約三十万円。マゴット治療が普及し、増産体制が整えばより安価な価格設定も可能だ。将来は六万円程度で提供できればと思う」

 ―設立の手応えと今後の見通しは。

 「これまでは岡山大でしか治療実績はなかったが、会社をつくったことで、国内の四施設が新たに治療を行った。全国の潰瘍による下肢切断患者は年一万人以上いるが、マゴット治療はほとんど行われていないのが現状。まず治療法を知ってもらい、普及させることが先決。そのためのホームページも作成した。二〇〇六年の年間治療実績百二十人と、五千万円程度の売り上げを目指していく」
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年05月12日 更新)

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