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人工関節の最先端治療

整形外科部長
難波  良文
1997年、岡山大学医学部大学院整形外科医学博士課程修了。翌98年から岡山労災病院で医長や人工関節センター長を務める。2010年から川崎医大骨・関節整形外科准教授、同大附属病院整形外科副部長、2015年から現職。

 川崎医科大での関節の治療方針は、「患者さんの負担を最小限に」「安全に手術を行う」です。手術後できるだけ痛みを感じないように、またできるだけ術後の制限がないように(たとえばゴルフができる,膝をついてもよいなど)、さらに費用面の負担も少なくした上で、高齢者でもできる正確な手術、出血を減らすことを目標にしています。現在は、傷は小さく筋肉は切らない最少侵襲手術(MIS)とコンピューター支援手術(CAOS)を融合した形で治療を行っています。

 最近の取り組みとしては、股関節での仰臥位(上向き)の最少侵襲手術が挙げられます。これまでの人工股関節手術は、側臥位(横向き)で行うのが主でしたが、不自然な体位な上、下肺が圧迫されて、痰がたまりやすいという難点がありました。仰臥位で手術をすることで、この点が改善され、筋肉を切らない方法で手術すれば、10日ほどで杖なしで歩けるようになった例もあります。
 
 川崎医科大では、人工ひざ関節の両ひざ同時手術が可能です。3週間程度の入院が1回で済み、分けて手術をするより、費用も入院日数も少なくて済みます。方法としては、傷が小さく、骨の切除も少ない最少侵襲のUKAと呼ばれる内側の関節のみを入れ替えるやり方を採用。回復が早く、合併症も少ないことが症例を比較した結果で分かっています。また、これまで難しかった正座やひざをつくこともできるようになりました。

 2011年以降は400例を超える実績を維持しています。症例数の少ない術者の成績は有意に悪いとの報告もあり,レベルを保つためには日々の鍛錬とある程度の症例数が必要であると考えています。



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※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年07月16日 更新)

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