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前立腺肥大症に新しい内視鏡治療 倉敷中央病院 レーザー使い体の負担軽減 1年で50人実施 合併症ある患者にも安全

前立腺肥大症のレーザー治療を行う倉敷中央病院泌尿器科の寺井主任部長(右)ら

寺井章人主任部長

 尿が出にくい、夜中に何度もトイレに起きるなど、前立腺肥大症の症状に悩む中高年男性は多い。その内視鏡治療で、従来の電気メスの代わりにレーザーを使う方法が普及し始めた。昨年八月、岡山県内でいち早く導入した倉敷中央病院(倉敷市美和)は一年間で約五十人の患者に実施。泌尿器科の寺井章人主任部長は「出血の危険性が減り、術後の痛みも少ない。患者への身体的負担が軽いため、心臓などに合併症がある患者や大きな前立腺肥大にも安全に手術できる」とメリットを語っている。


 前立腺肥大症の治療は、前立腺の筋肉を緩ませ尿の通りを良くするα1遮断薬による薬物治療が中心。十分な効果がない場合は外科治療を行う。倉敷中央病院の場合、年間七百人前後の新患があり、外科治療を受けるのは五十人程度。

 尿道から内視鏡を入れ肥大部分を電気メスで少しずつ削り取る「経尿道的前立腺切除術」が標準的な手術方法とされ、開腹手術に比べ体の負担は軽く、回復も速い。

 ただ「出血が多くなったり、視野を保つために流す灌流(かんりゅう)液が体に吸収され、吐き気や血圧低下、意識障害など低ナトリウム血症を起こす危険性があった」と寺井主任部長。肥大した前立腺の容量が百立方センチ以上と大きな場合、切除に時間がかかり副作用の恐れが高くなるため、開腹手術を行っていたという。

 電気メスの代わりにレーザーを使う「ホルミウムレーザー前立腺核出術」は一九九〇年代後半、欧米を中心に始まった。ホルミウムレーザーは切除と止血を同時にできるのが特徴。前立腺肥大症で肥大を起こす内腺と外腺の間には血管が少なく、はがれやすい面がある。この面に沿い内腺を丸ごとくりぬいた後、裁断して吸い出す。

 同病院は最近一年間の外科治療のほぼすべてをレーザーで行った。このうち十五~二十人は前立腺が大きく従来なら開腹手術が必要だったり、心臓などの合併症で外科治療が難しかった患者という。

 レーザーによる手術時間は二時間半程度と電気メスより一時間ほど長いため、下半身麻酔でなく全身麻酔で行っている。入院期間は四泊五日で、入院翌日に手術を行う。健康保険が適用され、費用は三割の自己負担で十四万~十五万円。

 ただ、レーザーは装置が高価で、電気メスに比べ方法がやや複雑なこともあり、実施施設は全国でまだ五十カ所程度。新しい治療法のため長期成績も分かっていないが、寺井主任部長は「今のところ、術後の排尿状態など治療効果は電気メスと同等か、それ以上。無条件にすべての患者に行えるわけではないが、排尿で悩んでいる人は相談してみてほしい」と話している。

ズーム

 前立腺肥大症 男性特有の生殖器・前立腺に良性腫瘍ができる病気。悪性腫瘍の前立腺がんと異なり、生命へ直接の危険はない。しかし、前立腺はぼうこうの下に尿道を取り巻くようにあるため、肥大が進むと尿道を圧迫し、排尿困難、残尿感、頻尿などの症状を起こす。加齢とともに起こり、患者は50歳ごろから出始め、70~80代では7割以上にこの病気の傾向があるとされる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年09月23日 更新)

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