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(2)関節リウマチの診断と薬物治療 倉敷スイートホスピタル副院長・リウマチセンター長 棗田将光

図1

図2

図3

図4

図5

図6

図7

棗田将光リウマチセンター長 

 前回は関節リウマチという病気のしくみをお話しいたしました。今回は、現在の関節リウマチの診断と治療の流れについてお話しいたします。関節リウマチは閉経期の女性に発症しやすい病気で、一つの関節だけでなく複数の関節に対称的に腫れや痛みが出るのが特徴(図1)で、朝のこわばりや全身倦怠(けんたい)感や微熱などもよく見られる症状です。適切な治療をほどこさなければ関節破壊を来し、関節の変形にいたることもあります。関節の腫れや痛みを起こす病気は関節リウマチ以外にも痛風や偽痛風、変形性関節症などがあります。

 関節リウマチと診断するには、手や足、肩や肘、膝や股関節や足首などの腫れや痛み、関節の変形などの症状(図2初期、図3進行期)のほか、レントゲン、血液検査による炎症反応やリウマチ因子の結果(図4)から、他の関節の病気を考慮して総合的に診断します。レントゲンで骨のびらん(骨が溶けていく様子)や関節破壊像(図5)があれば明らかに関節リウマチと診断できますが、病気の初期で診断がつきにくい場合には、リウマチ学会の分類基準を用いたり、近年では関節超音波検査や関節MRIを用いて早期関節リウマチ診断への重要な参考所見にします。

 さらに、患者の病気の状態や背景の把握のために、クラス分類(日常生活機能)とステージ分類(関節破壊の進行度)、病歴(病気の期間)、疾患活動性(病気の勢い)の判定を行います。このうち疾患活動性は、治療方針を決めるうえで重要であり、DAS―28(ダス28と読みます)という指標を用いて薬剤選択や効果判定に使用します。DAS―28は血液検査のうち炎症反応であるCRPや血沈のほか、患者と医師の評価点数で数値化されます。これらのデータや画像をもとに患者に病気と治療の十分な情報提供を行い、患者同意のもとに治療を開始します。

関節リウマチの治療のパラダイムシフト(大変革)!

 関節リウマチの治療は薬物治療が主体となります。前回お話ししましたように、関節リウマチは誤った免疫の情報(免疫異常)が原因となって関節に炎症を起こします。ですから治療は炎症を抑えて免疫異常を是正する抗リウマチ薬が主体となります(図6)。

 抗リウマチ薬は従来型抗リウマチ薬と生物学的製剤に分けられ、このうち生物学的製剤は2003年に1剤目が登場し、現在は7種類の生物学的製剤があります。これら生物学的製剤の登場によって、世界的に治療の流れが大きく変わりました。

 早期治療と目標達成治療という概念が確立され、その結果、寛解(治癒と同じ状態のこと)が現実化され、関節破壊阻止が可能になり、生命予後(寿命)の改善がもたらされました。昨年(14年)、日本リウマチ学会からも治療指針が提唱されました。要約すると、薬物治療の基本は「メトトレキサート」という抗リウマチ薬で治療を開始し、この薬剤を増量するか他の抗リウマチ薬を併用していきます。それでも効果が得られない場合は生物学的製剤を開始し、3~6か月ごとに治療効果を判定した上で、2剤目、3剤目の生物学的製剤に変更し関節破壊の抑制を目指します(図7)。

 このように現在の治療目標は「臨床症状の改善のみならず、関節破壊の抑制を介して長期予後の改善、特に身体機能障害の防止と生命予後の改善を目指す」と明確に提唱されました。わかりやすく言うと、「しっかり炎症を抑え、きちっと関節の変形を防止し、痛みのない日常生活を過ごし、健康寿命をのばしていくこと」が実現可能な治療の目標となっています。

 さて、治療の流れと目標は明確になっていますが、実際の診療では患者ごとに治療反応性が異なり、社会的背景も考慮しながら個々の患者のニーズにあわせた治療目標を設定していきます。そのほかにも白血球除去療法(LCAP)という治療法がありますが、第4回と第5回で詳しくお話しいたします。患者においては、医師に言われるがままではなく、ご自分の病気を理解し、現在の治療がどの位置にあるのかを認識していただくことも関節リウマチ治療には重要な要素といえます。次回は関節リウマチの手術療法とリハビリテーションです。



 倉敷スイートホスピタル((電)086―463―7111)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年10月19日 更新)

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