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(2)脈圧・平均血圧と2種類の動脈硬化 岡山西大寺病院副院長 井久保卯

井久保卯副院長

 今回、上と下の二つの血圧の値から計算される「脈圧」と「平均血圧」と動脈硬化との関係について説明します。

 図5表1の通り“脈圧は上の血圧から下の血圧を引いたもの、平均血圧は下の血圧に脈圧の3分の1を足したもの”です。さて、平均血圧について少し説明を加えます。図6でダム(心臓)から水(血液)がドッキンドッキンと拍動して放流されています。太い川(血管)から枝分かれを繰り返して細い水路(血管)を水が流れ、拍動は次第に弱くなり最後に水田(細胞)に到達したときは一定量の水が流れます。このように、末端の細い血管には拍動のない常に一定の圧力がかかります。これが平均血圧です。

 次に、動脈硬化については、太い血管と細い血管と分けて考えます。

 まず太い血管が硬くなるとどうなるか考えてみましょう。まず図7―aを見て下さい。太い血管がもしもガラス管でできていたら、収縮期に広がることが全くできず血液を貯めることができません。そのため、拡張期に心臓の補助ポンプの役目ができず拡張期に血流はなく、拡張期血圧はゼロになります。は若くて伸展性のある正常な太い血管です。収縮期に太い血管に多くの血液が貯留されるので収縮期の血圧が低く、拡張期には多くの貯留された血液が流れるので拡張期の血圧が高くなります。

 は太い血管が動脈硬化を起こした場合です。このとき、収縮期に太い血管に貯留される血液量が減少するため収縮期の血流量が増え、収縮期血圧が高くなります。その分拡張期に流れる血流量が減るため拡張期血圧が低くなります。

 これは正常のとガラス管のの間と状態であり、太い血管がガラス管のようになっていくことを意味します。このように、太い血管が動脈硬化をきたした場合は、収縮期血圧が高くなり拡張期血圧が低くなります。すなわち上と下の血圧の差である脈圧は大きくなります。

 次に細い血管が硬くなる、すなわち末梢血管抵抗が大きくなるとどうなるでしょうか。前回、血圧=ポンプの力(心拍出量)×血管の硬さ(末梢(まっしょう)血管抵抗)という関係があることをお話ししました。この関係から、細い血管が動脈硬化をきたした場合は血圧全体が高くなります。すなわち収縮期血圧、拡張期血圧どちらも高くなります。加えて血管が細くなり、末梢の血流が減ると収縮期に太い血管に貯留する血液が増えるため、拡張期に流れる血流量が増え拡張期血圧が特に高くなります。

 このように、細い血管が動脈硬化をきたした場合はどちらの血圧も上がりますが、特に下の血圧が上がります。すなわち平均血圧が上昇します(図5表1の計算式から「平均血圧は下の血圧に近い」、難しく言い換えれば「上の血圧よりも下の血圧の方が平均血圧への寄与が大きい」ことがわかります)。要するに脈圧は太い血管の動脈硬化の指標、平均血圧は細い血管の動脈硬化の指標になります。

 それでは加齢にしたがって動脈硬化はどのように進行していくでしょうか。「動脈硬化は細い血管から起こり、やがて太い血管にも進行していく。そのため、まず平均血圧が上昇し、続いて脈圧が大きくなっていく」ことがわかっています。一般に血圧は加齢に伴って上昇します。収縮期血圧に顕著で、高齢期になっても増加は続きます。一方拡張期血圧では50歳代をピークとして以後は不変か減少傾向があります。平均血圧は加齢とともに上昇がみられる一方、脈圧は50歳以降でその上昇が著しくなります(図8)。

 次回は自分の脈圧・平均血圧から動脈硬化に対してどう取り組めばいいのかを考えていきましょう。

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 岡山西大寺病院(086―943―2211)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年10月19日 更新)

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