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乳がん予防、年代別に適切な検診を 岡山大病院の土井原博義教授に聞く 

乳がん予防について話す土井原教授

 乳がん予防を啓発する「ピンクリボン運動」。岡山県では今月、県や県医師会、患者会などが、初めて全県的に「ピンクリボン岡山」を展開している。活動の中心となっている一人、岡山大病院乳腺・内分泌外科の土井原博義教授に、乳がん予防の対策や検診の重要性について聞いた。

―乳がんの特徴と、発症しやすい年代は。

 乳房の大部分を占める乳腺組織に発症し、約9割は母乳の通り道となる乳管上皮、残り1割は母乳が作られる小葉部分にできる。発生場所としては、乳房外側の上部分(外上部)が約半数を占める。

 女性ホルモンのバランスが崩れる40代、閉経する50代に多いが、30代の患者もわずかずつ増えている。がんの部位別死亡率を調べると、乳がんは20~80代の女性全体では5位だが、30~60代ではトップ。30代はがんの進行が早く、検査でも見つかりにくいことから、がんと診断された時には相当進行していることが多く、再発や死亡率の高さも目立つ。

 ―発症原因や予防法は。

 遺伝要因や欧米的な高脂肪の食生活、酒やたばこ、肥満などが要因とされる。また、臨床データ的には出産・授乳経験がないことも要因の一つといえる。一次予防として、食生活や肥満の改善は誰でもできる対策。「週1回約1時間のジョギング」に相当する運動は予防効果がある。

 二次予防が検診。2013年度の国民生活基礎調査によると、乳がん検診の受診率は34%と高くない。岡山県はかつて受診率が高かったが、市町村実施分の受診率をみると13年度で29・6%と低迷。「早期発見すれば治る病気」であることは間違いないが、安易に「乳がんになっても死なない」と考えてはいけない。

 ―検診はどのように受けるのが適切か。

 40代以上は、2年に1回はマンモグラフィーを受けるのが有効とされている。30代は乳腺が発達し乳腺濃度が高いためマンモ撮影しても全体が白く映ってしまうことが多く、腫瘍を見分けにくいことがある。だが、健康時のデータを残す意味でも一度はマンモを受けてほしい。

 多くの病院で超音波(乳腺エコー)検査を実施しているが、マンモと違い、乳腺濃度が高くても有用。ただ医師や技師の技術に負う部分が大きく、がん発見の有効性のデータは実はまだ発表されていない。現在、「J―START」という全国規模の臨床研究で、マンモと併用による効果をあらためて調べており、近々発表される予定だ。

 ―乳がんの自己検診については。

 適切に自己検診できれば、乳がん発見の可能性は高まる。しかし、正しい方法で自己検診できている人がどれだけいるか疑問。病院や自治体での検診時に、医師、保健師らから正しい方法を学んで実践してほしい。ピンクリボン運動を通じ、正しいやり方を啓発していく必要がある。

 自己検診は最低でも月1回は行う必要がある。年2、3回行うだけでは、小さな変化には気付きにくい。閉経前の人は乳腺が張っていると検診しにくいため、月経後1週間あたりが最適。閉経後の人は覚えやすい日付を決めて、入浴時などに行う。欠かさず行うことで変化に気付きやすくなり、腫瘍の大きさが1センチ程度の早期に発見できた事例もある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年10月19日 更新)

タグ: がん女性岡山大学病院

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