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改正障害者雇用促進法 施行から半年 精神障害者の就職へ理解を 支援制度増も効果不透明 企業の協力不可欠

岡山市内の福祉施設でせっけん作りに取り組む精神障害者。一般企業で働くためには、企業側の理解が不可欠だ

 精神障害者の就職を進めるため、身体、知的障害者に限定されていた法定雇用率算定対象に精神障害者も加えた「改正障害者雇用促進法」が施行され十月で半年。国は事業主に助成金を支給するなど雇用促進を後押ししているが、精神障害者の雇用が義務化されたわけではないため、就業機会拡大につながるかは不透明なのが現状だ。

 「何度も就職したが、その度に病気が知られて居づらくなり、どの職場も長続きしない」。精神障害者の就職相談、あっせんに当たる社会福祉法人あすなろ福祉会(岡山市国富)には、このような内容の電話が一日一、二件掛かってくる。井手綾乃施設長(32)は「障害者が責任を持って自分の人生を生きるためにも仕事は必要。法が改正されたとはいえ、企業の協力なしに就職は難しい」と話す。

低調な雇用率

 改正法は企業側に1・8%の雇用率を求めるが、必ずしも精神障害者を雇う必要はなく、身体、知的障害者だけでその数字を満たすことも可能。

 岡山労働局によると、二〇〇五年度、県内企業九百八十社が雇用している障害者は約三千二百人、雇用率は1・68%(全国平均1・49%)と、平成に入り二番目の低調さだった。岡山公共職業安定所の同年度の障害者有効求職登録者は五百二十八人。二百二十六人が就職したが、精神障害者はわずか二十四人にとどまった。

 就職を希望する精神障害者と受け入れ企業を支援する制度は増えてきている。岡山障害者職業センター(岡山市平田)は昨年十月から、無料で職場復帰に必要な職業訓練、専門カウンセラーによるストレス対処講習を実施。併せて、雇用側の不安を取り除くため、ジョブコーチ(職場適応援助者)と呼ばれる専門職員を会社に派遣し病状や職場での接し方を説明する制度も導入。同制度を利用した精神障害者は、今年四月から八月末までに二十五人に上った。

偏見を恐れ

 支援策が充実しつつある一方、働き口を探す際に病気を公にするかどうか悩んだり、病気を打ち明けないという精神障害者は多い。

 二十年前から統合失調症になり、岡山市の小規模作業所で働く男性(38)は「今年中に新しい仕事に就きたいが、病気を打ち明けるつもりはない。病状が落ち着いているときまで特別な目で見られてしまうから」と話す。

 岡山障害者職業センターの岡野真理カウンセラー(44)は「偏見を恐れ、病気を隠したまま働きたいと望む人が多いが、病気を告げなければ企業は公的支援を受けられない。病気を明らかにすると求人数は少なくなり、結局働くことをあきらめるケースが多くなる」と説明する。

 県精神障害者家族会連合会の鵜川克己会長(69)は「企業には『戦力として雇いにくい』との声もあるが、社会的な責任の観点からも企業側は雇用拡大へ一層理解を」と要望する。


ズーム

 改正障害者雇用促進法 従来は全従業員数に占める身体、知的障害者の割合を法定雇用率(民間企業は1・8%)としていたが、改正法は雇用率算定対象に精神障害者も加えるよう変更。例えば、1000人の企業の場合、身体、知的、精神障害者を合わせて18人雇わなければならない。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年09月25日 更新)

タグ: 福祉

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