文字 
  • ホーム
  • 女性
  • 妊婦さん、子育て中のママへ 治療法や日常生活での注意点解説

妊婦さん、子育て中のママへ 治療法や日常生活での注意点解説

嶋村廣視副院長

「きれ痔」ってなぁに? 裂肛編

 ひとくちに「痔」と申しますが、「痔」には、「いぼ痔(痔核)」、「きれ痔(裂肛)」、「あな痔(痔瘻(ろう))」の3つがあり、それぞれ病態や治療が異なります。

 今回は、「きれ痔」=【裂肛】についてお話しします。

 「きれ痔」とは読んで字のごとく、“肛門が切れること”です。症状としては、おしりの痛みや出血が主なものです。

きれ痔のこと

 肛門は肛門縁(肛門の出口)から約1.5センチほどの表面が皮膚に似た上皮(肛門上皮)で覆われており、この部分は通常の粘膜より血流が悪く、また、便と直接、接する所であるため、しばしば切れてしまいます。

 切れてすぐであれば軟膏(こう)や排便の調整で比較的簡単に治りますが、元来、便秘や下痢など排便習慣に異常がある人は“傷”が癒える前に再び傷つけられてしまい、症状が長引くことになります。これを繰り返していると“傷”の外側に突起ができたり(みはりいぼ)、内側にふくらみ(肛門ポリープ)ができてきます。この状態を「慢性裂肛」と呼びます。

 さらにきれ痔がこじれると

(1)肛門潰瘍
 “傷”が深くなって治らない状態。痛みが排便後長時間続く。

(2)痔瘻
 “傷”から“ばい菌”が進入して感染を起こし、トンネルができた状態。普通の痔瘻よりも浅い所にできる。

(3)肛門狭窄
 きれ痔を繰り返し、瘢痕(はんこん)のため肛門が狭くなり、便が出にくくなった状態。ひどくなれば鉛筆も通らないくらいの狭さになることもある。

 これらの治療には手術が必要になります。

治療について

 治療は、まず保存的治療を行います。(これが基本です。)

(1)保存的治療
 生活習慣の改善を図りつつ、軟膏や内服薬を用います。

(2)手術療法
 それぞれの病態に応じた手術を選択します。
肛門潰瘍(+肛門ポリープ)
潰瘍切除(+ポリープ切除)、内括約筋側方切開術(LSIS)
痔瘻
開放術式(lay open)
肛門狭窄
皮膚弁移動術(SSG)

日常生活で気を付けること

(1)便秘・下痢に注意
 硬くて太い便を無理やり出せばおしりが裂けます。かといって軟らかい便が出ていても下痢状態で何回もトイレに通ってもまた切れていしまいます。

 症状が強いときは、下痢(軟便剤)や下痢止め(整腸剤)で調整することもあります。“ほどほど”が肝心です。

(2)おしりを冷やさない 毎日お風呂に入る
 おしりが冷えると血行が悪くなり、おしりの筋肉(肛門括約筋)の緊張が強くなります。

 正常な肛門は排便のときには自然に緊張が緩んで便を出しやすい状態になります。ゆるんでいない状態で便を出せば、やはり切れてしまいます。

 また、血行が悪いときれ痔ができてしまったあとの治りも悪く、慢性化しやすくなります。

 肛門の痛み、出血といってもその原因はさまざまです。症状が続くときは早めに専門医を受診することをお勧めします。(チクバ外科・胃腸科・肛門科病院 嶋村廣視副院長)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年10月26日 更新)

ページトップへ

ページトップへ