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早めにインフルエンザワクチンを 近づく流行期に接種

重症化を防ぐ効果などがあるインフルエンザの予防接種=岡山市内

国富岡山県医師会理事

 高熱や関節、筋肉の痛み、倦怠(けんたい)感など全身に強い症状を引き起こすインフルエンザの流行期(12月~翌年3月)が近づいてきた。発症や重症化に一定の抑制力がある予防接種をはじめ、感染防止に役立つ日常対策のポイントなどをまとめた。

■予防接種 

 今シーズンからワクチンの型が変わった。これまではA型ウイルス2種とB型1種の計3種に対応する「3価ワクチン」。新ワクチンはA型2種とB型2種の計4種に対応する「4価ワクチン」で、ウイルスへの適応力が強化されている。

 注意したいのは接種の時期。接種から免疫ができるまでに2~3週間かかり、ワクチンの効果があるのはそこから3~6カ月程度と言われている。流行期をカバーするには11月中の接種が望ましい。

 予防接種には重い副作用の報告がまれにある。少しでも気になることがあれば医師に相談し、判断を仰ぐのがベストだ。

■マスク・手洗い 

 日常的に取り組める予防策は、マスクの着用と手洗いが代表的だ。

 ウイルスは非常に小さい粒子状物質。隙間をくぐり抜けるため、マスクで感染を阻止するのは不可能だが、着用していれば口元、鼻から、喉にかけて保湿効果を得ることができる。乾燥を好むインフルエンザウイルスに有効だ。さらに、せきやくしゃみでウイルスを含む飛沫(ひまつ)が周囲に拡散するのを防いでくれる。お互いのエチケットとして気を配りたい。

 手洗いも、外から持ち込んだウイルスを洗い流すことで効力を発揮する。液体石けんが使いやすく、〈もしもしかめよ〉で始まる童謡「うさぎとかめ」の1番分(20秒程度)が目安。手首までしっかりと洗った後は、30秒以上かけてしっかり流すのが基本だ。近年は職場などにアルコール消毒液を置くケースも増えており、積極的に活用したい。

■発症後 

 急激に体温が上がり、倦怠感があれば感染、発症した可能性が高く、早めに医師の診断を受けたい。

 抗インフルエンザ薬は、発症から48時間以内に服用すると発熱の期間を短縮する効果があるとされている。48時間を過ぎて服用してもウイルス量は減らず、効果があまり期待できないというデータがある。

 発症した人は「感染源」にもなる。学校や仕事を休んだり、不要不急の外出を控えたりして十分に休養を取り、栄養補給に努めることが大切だ。

予防接種は高齢者に高い効果

 インフルエンザに関する疑問点について、岡山県感染症対策委員の国富泰二・県医師会理事(旭川荘療育・医療センター顧問医師)に聞いた。

 ―予防接種はどのような効果がありますか。

 感染、発症を完全に食い止めることはできませんが、発症を防ぐ効果を示す「有効率」は70%程度あります。特に65歳以上の高齢者に高い効果が認められています。死亡や入院といった重症化を防ぐ効果は約80%です。はしかや風疹などの予防接種に比べれば有効率は低いものの、一定の効果があるのは確かです。自治体によっては補助制度もあるので、活用しましょう。

 ―接種回数は1回? それとも2回?

 免疫が少ない13歳未満の子どもは2回が一般的です。2回目の接種には免疫を増幅させる「ブースト効果」があるからです。一方、13歳以上は1回で十分に免疫が得られます。

 ―発症した場合の注意点は。

 熱が上がった時間を記録しておけば、受診時にキットでの感染判定や投薬時間の目安として役立ちます。熱が下がっても、まだウイルスは体内に残っているので、回復後も数日は仕事や学校を休み、外出を避けて静養しましょう。

 ―身近な人は必ず感染するの?

 完全に防ぐのは難しいけれど、加湿器を使って湿度を上げるなどの対策を取れば感染しにくくなります。せきやくしゃみによる飛沫は通常1メートルほどの範囲にしか届きません。家族全員がマスクをし、会話の時も少し距離を保つことでもリスクは下がります。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年11月01日 更新)

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