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(3)関節リウマチの手術療法とリハビリテーション 倉敷スイートホスピタルリウマチセンター

【図1】

【図2】関節変形予防の装具

【図3】自助具(さまざまな種類の爪切り)

篠田潤子医師

藤田慎一朗理学療法士

 今回は関節リウマチの手術療法とリハビリテーション(以下リハビリ)についてお話しします。

▼手術療法 

 手術療法は、病巣である滑膜を取り除く滑膜切除術と、関節再建を行う関節形成術の二つに大きく分けられます。では、どういったときに手術を行うのでしょうか。

 変形した関節や機能障害を生じた関節は薬物のみでは治りません。薬物治療で寛解(治癒と同じ状態のこと)に至っていても、関節機能障害のためにADL(日常生活動作)低下を生じている方も少なくありません。

 こういった場合、病巣を外科的に取り除いて、できる限りの機能回復を目指します。たとえば「尺側偏位」といって指全体が小指側に流れるような変形を来した場合、特に小さな物がつかみにくくなり、指と指で物をつまむピンチという動作が困難になって、握り込むような形でなければ物が持てなくなります。特に女性では、包丁が持てない(自分で手を切ってしまった)、お化粧ができない、アクセサリーがつけられない等から、生活行動範囲が狭くなります。

 この場合、滑膜切除術で病巣滑膜を切除したり、関節の変形矯正のための関節形成術をすると、機能回復ばかりでなく美容上も改善し「外出することが楽しみになった」と喜ばれる方もおられます(図1)。人工関節をはじめ手術機器・術式も薬物療法と同様に進歩し、術後のリハビリも手術翌日から始まり、手術成績もめざましく向上しています。当センターでは岡山大学の西田圭一郎准教授にも執刀していただき、内科薬物治療と整形外科手術療法の連携によってさらなる患者満足度向上を目指しています。

▼リハビリテーション 

 薬物療法、手術療法の進歩に伴い、以前と比べ積極的なリハビリが行えるようになってきました。しかし血液データが良好な場合でも、腫れや熱感の強い関節に対してむやみに動かすことは好ましくありません。“関節を保護する”という意識づけは常に大切なものです。しかし機能維持に運動は不可欠であり、関節変形を予防するための装具(図2)や自助具(図3)を生活の中でうまく組み合わせて、“適切”に動かすことも大切です。

 リウマチ患者の平均寿命は確実に伸びています。言うまでもありませんが、健康寿命は自分自身で伸ばしていくものであり、加齢とともに低下していく身体機能に対してリハビリは有効です。薬物療法・手術療法とともにリハビリは一生行うことであり、患者さん本人の前向きな気持ちが最も大切です。

 さらに現在は通所・訪問リハビリ等もあり、医療から介護へ切れ目なくリハビリを受けることが可能となっています。

 手術療法に関して、「どういった手術があるの?」「自分は手術をしたら良くなるのだろうか?」「リハビリに関して今の自分に適切な運動は?」「どんな装具や自助具があるの?」などの不安や疑問に思うことがあれば、医師だけでなく看護師やリハビリスタッフにも相談してください。関節リウマチ診療に精通したリハビリ専門職(理学療法士・作業療法士)が医師と密な連携を取ることにより、個々に応じたリハビリを行うことができます。適切な手術療法やご自分に合ったリハビリでQOL(生活の質)向上を目指しましょう。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 篠田 潤子(しのだ・じゅんこ) 岡山大大学院医学研究科卒。岡山労災病院整形外科、国立療養所長島愛生園整形外科、岡山労災病院リハビリテーション科を経て今年4月から倉敷スイートホスピタル整形外科。日本整形外科学会整形外科専門医、日本リハビリテーション医学会認定医、日本リウマチ学会リウマチ専門医。

 藤田 慎一朗(ふじた・しんいちろう) 倉敷青陵高、宮崎リハビリテーション学院卒。医療法人暁星会三財病院を経て2005年、倉敷廣済病院(現倉敷スイートホスピタル)勤務。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年11月02日 更新)

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