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(5)加齢黄斑変性 岡山大学病院眼科学教室助教 細川海音

 加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)は、欧米では以前から主要な失明原因であり、近年は日本でも生活の欧米化とともに急激に増加している病気です。主に50歳以降に発症し、加齢とともにこの病気にかかる方が増えることが知られています。現在、日本人の視覚障害の原因として4番目に多い病気であり、今後も患者数が増加することが予測されています。

加齢黄斑変性の症状 

 眼球の後方の内面は、網膜と呼ばれる神経の膜で覆われています。私たちが見た映像はこの網膜に映し出され、その後、脳へと伝えられます(図1)。そして、網膜の中心部分は物を見るのに特に重要な部分であり、黄斑と呼ばれます。

 加齢黄斑変性という病気は、加齢とともにこの黄斑が障害される病気です。この病気になると、物がゆがんで見えたり、見たいところが黒く抜けてしまうといった症状が出現し、視力が低下します(図2)。

加齢黄斑変性の種類 

 加齢黄斑変性には大きくわけると滲出(しんしゅつ)型と萎縮型の2つの種類があります。日本人に多くみられ、治療の適応となるのは滲出型です。滲出型では、脈絡膜という網膜の裏にある血管に富んだ組織から、脈絡膜新生血管という異常な血管が生じ、黄斑に出血や水ぶくれを引き起こします。(図3

治療法 

 今から15年ほど前までは加齢黄斑変性に対して有効な治療法がありませんでしたが、治療法の進化により、網膜の障害が軽度であれば、視力を改善することができるようになりました。現在、加齢黄斑変性に対しては、主に二つの治療方法があります。一つ目は、脈絡膜新生血管の発生、発達を抑える薬(抗VEGF薬)を目の中に注射する方法(硝子体=しょうしたい=注射)であり、第一選択として最も多く行なわれている治療法です。二つ目は、特殊な薬剤の点滴をしてから弱いレーザーを照射する方法(光線力学療法)です。病状によっては硝子体注射と光線力学療法を併用して行うこともあります。

加齢黄斑変性の治療における注意 

 加齢黄斑変性の状態、進行速度は個人差が大きく、またいったん病状が改善しても、しばらくして再発を起こすことがある病気です。再発を繰り返すことは長期的な視力低下につながりますので、いったん症状が改善したからといって通院をやめてしまわずに、定期的な検査、治療を継続するようにしましょう。

 また、加齢黄斑変性は、病気が進行してしまう前に、できるだけ早い段階で治療を開始した方が、よい治療成績が得られます。そのためには病気の早期発見が大切であり、日頃から片眼(め)ずつの見え方をチェックすることが重要です。この紙面にある格子の絵(図4=アムスラーチャート)を片眼ずつ見たときに、線がゆがんで見える、真ん中が黒く抜けて見えるなどの症状があった場合は、早めにお近くの眼科を受診されることをお勧めします。

 ほそかわ・みお 倉敷天城高、香川大医学部卒。姫路赤十字病院、岡山大学病院、広島市民病院、岡山赤十字病院を経て2013年より現職。日本眼科学会眼科専門医、同学会眼科光線力学療法認定医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年11月02日 更新)

タグ: 岡山大学病院

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