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(3)動脈硬化の状態を把握し対策を考えよう 岡山西大寺病院副院長 井久保卯

井久保卯副院長

脈圧と平均血圧をチェック

 最終回の今回は、自分の血圧から動脈硬化を把握しましょう。

 前回、「脈圧は太い血管の動脈硬化の指標、平均血圧は細い血管の動脈硬化の指標」であることをお話ししました。血圧の基準値、脈圧・平均血圧の計算式と目安をまとめたものが表2です。まず自分の血圧の値から脈圧・平均血圧を計算してみましょう。現在の動脈硬化の状態が把握できます。もし過去の血圧のデータがありましたら、そこから過去の脈圧・平均血圧も計算してみましょう。脈圧・平均血圧の現在と過去を比較することで、動脈硬化の進行状況が推測できます。

 具体例としてひとつ問題を出します。「AさんとBさんは70代で同じ年です。二人の15年前の血圧はどちらも120/75で同じでした。現在Aさんは140/95、Bさんは140/65です。どちらの血圧が好ましくないでしょうか?」=図9

 血圧の数値だけ見るとAさんは下の血圧が高いので悪そうです。しかし、私はBさんが心配です。脈圧・平均血圧を見てみましょう。15年前は二人とも脈圧が45で平均血圧が90でした。現在Aさんは脈圧が45で平均血圧が110、Bさんは脈圧が75で平均血圧が90です。「動脈硬化は細い血管から起こり、やがて太い血管にも進行していく。そのため、まず平均血圧が上昇し、続いて脈圧が高くなっていく」ということを前回お話ししました。ということは、この15年間でAさんは細い血管の動脈硬化が進み、Bさんはそれに加えて太い血管の動脈硬化も進んできていると考えられます。

 血圧測定をして、上と下の血圧が高いかどうかはもちろん大事なことです。しかし、下の血圧(拡張期血圧)は実はくせ者で、その数値の高低だけでは良し悪しが判断できないことがあります。上の血圧(収縮期血圧)とのバランスが大事なのです。一般に 収縮期血圧:拡張期血圧:脈圧=3:2:1 が良いバランスだといわれます。正常血圧の120/80(脈圧40)がひとつの理想血圧といわれるゆえんです。

 動脈硬化が引き起こす病気は図10のようにたくさんあります。そして、動脈硬化と血圧は非常に緊密な関係にあります。動脈硬化が進むと血圧が上がることは今までお話しした通りです。逆に、血圧が上がると血管の内壁に加わる衝撃・ダメージが強くなるため、柔らかな壁がだんだん固くなると同時に内腔(くう)が狭くなる、すなわち動脈硬化が進行することは容易に想像ができると思います。このように、動脈硬化と血圧は互いの原因にも結果にもなり得るのです。ですから動脈硬化の進行を予防するためには、まず血圧をコントロールすることが大切です。

 また高血圧以外の動脈硬化の重要な危険因子である高脂血症(脂質代謝異常)・喫煙・肥満(過食&運動不足)・糖尿病に問題があれば、それらも改善しなければいけません。

 動脈硬化は生まれてすぐの0歳の時から始まると言われています。動脈硬化の病気が顔を出し始めるのは中年以降が多いのですが、実は顕微鏡のレベルでは10代で既にその変化が見られます。心臓や血管は生まれた時からずっと1日約10万回、休まずに収縮と拡張を繰り返しています。その意味では、動脈硬化は血管の老化現象・使用疲労ともいえますが、その進行状況にはかなりの個人差があります。それは、先ほどの危険因子の影響を強く受けるからです。

 それでは動脈硬化の対策の第一歩として、まず現在の自分の状態を把握することから始めましょう。医療機関ではさまざまな検査で動脈硬化を評価することができますが、今回、上と下の血圧から簡単に計算できる脈圧と平均血圧を使ってその進行の程度を推測する方法をお話ししました。そして今後も血圧を測る機会があれば、たまには脈圧と平均血圧をチェックしてみて下さい。“動脈硬化の視点から血圧を眺めてみる”ということです。

 今回3回シリーズをまとめたものがまとめです。

 最後に、家庭の血圧測定についてひとつアドバイスをします。最近、家庭の血圧測定が重要視されており、高血圧の治療において大事な目安になっています。しかし、注意点があります。家庭用血圧計を含めデジタル表示の血圧計の測定値と実測の血圧計(診察室での聴診法)の測定値との間に、ズレが生じることがあります。特に家庭用では下の血圧が少し高く表示されるように思います。家庭用血圧計で測定した血圧の値がおかしいと思ったら、かかりつけの先生にその血圧計を持って行って実測値と比較してもらうことをお勧めします。

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 岡山西大寺病院(086―943―2211)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年11月02日 更新)

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