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(4)関節リウマチの看護とケア 倉敷スイートホスピタルリウマチセンター看護部

【図1】現在、不安なこと(2015年リウマチ白書 日本リウマチ友の会より)

【図2】LCAPに付き添う看護師

【図3】フットケア中の看護師

竹本美由紀外来科長

淺野由珠子病棟科長

 今回は関節リウマチ診療における看護とケアについて、私たち看護師の目線からお話をさせていただきます。看護師も医師と同様、業務は細分化され、専門領域があるのをご存知でしょうか。たとえば、糖尿病認定看護師やがん領域の認定看護師、透析看護師と同様に、関節リウマチの領域でも患者により良い治療環境を提供することを目的に、日本リウマチ財団が認定する「登録リウマチケア看護師」という制度があります。

 当センターでは現在6名のリウマチケア看護師を中心とし、患者の診療にあたっています。医師に「リウマチです、治療を始めましょう」と告げられると気落ちされる方が多いと思いますが、現在では早期発見・早期治療によって寛解(治癒と同じ状態)に達することができます。しかし治療薬はたくさんの種類があり、その副作用も多岐にわたるため、私たち看護師は診察終了時に日常生活での注意点を説明し、何か異変があれば速やかな再診を勧めています。

 関節リウマチという病気が高血圧や糖尿病などと違う点は、痛みや苦痛を感じるばかりでなく、関節が変形した場合は日常生活や家事・仕事に支障をきたすことがあるということです。先日、患者の実態調査の結果をまとめた2015年版「リウマチ白書」が刊行されました。それによると治療・生活・社会保障などについて多くの不安を抱えておられます(図1)。

 診察後の点滴や採血時に、「さっき先生に聞き忘れたのですが」、「実際の治療費はどれくらいですか」など、聞かれることがあります。医師の説明が十分理解できなかった時や自分の気持ちが医師に伝えられなかった時には、私たち「登録リウマチケア看護師」が専門的な補足説明のほか、お困りのことなど十分うかがうように心がけております。

 登録リウマチケア 看護師の現場と実務  

▼自己注射       

 関節リウマチ治療のパラダイムシフト(大変革)をもたらした生物学的製剤(BIO)は、点滴製剤か皮下注射製剤のどちらかですが、ライフスタイルに合わせてどちらかの治療方法を選べます。皮下注射製剤は自己注射も可能です。自己注射の場合、「怖い」「無理無理」などと言われますが、私たち登録リウマチケア看護師と一緒に自己注射の練習を行うと、「思ったより簡単だった」という方もおられます。自己注射の利点の一つとして長期処方が可能になります。

▼LCAP療法(白血球除去療法) 

 BIOは優れた治療薬ですが、効果が不十分な時、合併症や副作用で使用できない場合にLCAP療法を選択することがあります。LCAP療法は白血球の一部を体外循環で吸着し取り除いて炎症を抑えるという方法です。1回の治療時間に2時間弱かかりますが、患者に不安を与えることのないように、看護師と臨床工学技士が最初から最後まで付き添い、十分な管理のもとで行います(図2)。

▼フットケアの実践   

 手や足の関節に変形をきたした場合は、清潔が保てなかったり、靴の“あたり”ができるケースも少なくありません。何らかの足のトラブルを抱えているにもかかわらず、痛みに耐えて生活されている方が多くおられるのが現状です。当センターでは診察時に足を診させていただき、鶏眼(うおのめ)があれば、私たちが医師の指示のもと専門的処置(図3)のほか、自宅でのケアの指導、自助具の紹介、手術療法を含めた整形外科医との連携も行います。

 「リウマチだから仕方ない」とか「どうせ治らない病気だから…」と思われている方も多いと思います。私たち「登録リウマチケア看護師」は、適切な治療のサポートとして患者の声に耳を傾けるだけでなく、専門的なリウマチケアの実践を行うことで、患者が「痛みのない満足できる人生」を過ごしていただくことを望んでおります。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 竹本美由紀(たけもと・みゆき) 広島・山陽女子高、川崎医療短期大卒。2012年、倉敷スイートホスピタル勤務。

 淺野由珠子(あさの・ゆきこ) 川崎医療短期大卒。川崎医大病院、重井医学研究所付属病院を経て2012年、倉敷スイートホスピタル勤務。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年11月16日 更新)

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