文字 

笠岡で認知症患者登録の呼び掛け ひとり歩きの不明者発見に効果

認知症患者が徘徊している場合の声の掛け方を学ぶ訓練=22日、笠岡市小平井

 地域全体で認知症患者を支える「笠岡市認知症ひとり歩きSOSネットワーク」事業の利用が低調だ。65歳以上の高齢者の4人に1人が患者とその予備軍とされる中、「地域ぐるみの支援システム構築が不可欠」と、市などは積極的な利用を呼び掛けている。

 ネットワークの仕組みは、徘徊(はいかい)の恐れがある人の顔写真や身体的特徴などを記した登録票を、家族が市長寿支援課に提出。登録情報は笠岡署も共有する。登録者が行方不明になった際には、約2千人が登録する市の緊急メールや、ケーブルテレビなどで市民に情報を発信し、地域を挙げて早期発見につなげる。

 市と市地域包括支援センターが2013年5月から行っているが、登録数は現在わずか18人。同センターの推計による市内の認知症患者数は2500人で、その1%にも達していない。

 「認知症への理解不足や偏見はいまだに根強く、病気を明るみにすることが怖い」。ネットワークを担当する同センターの高橋望さんは、介護家族の思いを代弁し、登録が増えない背景を説明する。

 一方で、ネットワークが生かされて、実際に行方不明者が見つかった事例がある。14年3月に80代男性が市内で行方不明になったケースでは、緊急メールで情報を知った知人が約7時間後に里庄町で男性を発見した。

 市や同センターなどは、ネットワークの仕組みや保護の流れを市民に知ってもらうため、説明会や訓練を各地で行っている。

 22日には、笠岡市大井地区で徘徊者役が実際に地区を歩く訓練があり、民生委員や福祉委員、笠岡署員ら計約70人が、徘徊者への声の掛け方などを学んだ。声掛けを体験した笠岡市内の女性(71)は「普段からあいさつ程度の声掛けはしているが、今後の参考になった。地域全体で認知症の方を支えられる社会が理想」と話していた。

 市長寿支援課は「認知症になっても住み慣れた地域で暮らせるように、今後も登録を呼び掛けたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年11月27日 更新)

タグ: 医療・話題

ページトップへ

ページトップへ