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中皮腫死者 74%アスベスト職歴 03年中 厚労省調査 吸入原因裏付け

 国の統計で二〇〇三年中、がんの一種・中皮腫で死亡した八百七十八人に対する厚生労働省の追跡調査(班長・岸本卓巳岡山労災病院副院長)で、職歴が判明した人の約74%(百二十八人)が、アスベスト(石綿)を扱っていたことが分かった。全国規模の調査は初で、中皮腫の約八割が仕事上の石綿吸入が原因とされる欧米の傾向を裏付ける形となった。

 〇三年度の労災認定は八十五件にとどまる。潜在的な補償対象者の多さも浮き彫りとなり、研究班は「主治医が職歴を詳しく聞き取っていないことが、労災申請が少ない要因と考えられる」としている。

 研究班は昨年十月以降、遺族に職歴や事業所名を尋ねる質問票を送付。遺族の同意を基に、医療機関にカルテなど治療情報を求めた結果、中皮腫とあらためて確認した百八十二人のうち、百七十三人の職歴が判明した。

 石綿を扱っていた百二十八人の内訳は、建設作業二十六、造船所内作業十六、鉄鋼製品などの製造と電気工事が各十二、配管十―など。潜伏期間は、最も多い胸膜の中皮腫で四十三年に上る一方、診断後の生存期間はわずか八・二カ月だった。

 岸本班長らは「中皮腫の早期診断、治療法の開発は急務。〇四年中の死者に対しても追跡調査を行い、実態把握に努めたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年10月24日 更新)

タグ: がん肺・気管

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