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動力源不要、人工筋肉で身体支援 ダイヤ工業と広島大が装置開発

人工筋肉(人形の肩と脚の赤い部分)を説明する小川研究部門長

装置の足底部分。緑色のポンプで人工筋肉に空気を送る

 医療用品メーカーのダイヤ工業(岡山市南区古新田)と広島大は30日、樹脂製の人工筋肉で人の動きを支援する装置を共同開発したと発表した。足底に付けた空気ポンプを踏むだけで人工筋肉が作動し、電池などの動力源は不要なのが特徴。筋力が衰えた高齢者らの生活や運動を補助する道具として実用化を目指す。

 装置は、空気圧で膨張・収縮するゲル状樹脂を特殊な化学繊維で包んだ人工筋肉(直径1センチ、長さ50センチの円柱形)を2本束ね、空気ポンプとチューブでつないだ構造。歩いたりするために使う太もも、腕を振るときに働く大胸筋と補強したい部位に、人工筋肉を面ファスナーで衣服などに装着する。ポンプは専用の靴底に取り付ける。

 歩行時にポンプを踏んで圧力をかけると、人工筋肉に空気を送り込んで膨張させ、装着部を動かす力を生み出す。足が地面から離れると空気はポンプ側に戻り人工筋肉は収縮する。試作品を太ももに着けて筋電(筋肉から発する電気)を測定したところ、未着用時に比べ太ももを上げる際の電位が約1割低下し、筋力を補う効果が確認されたという。

 同社は2011年にゴム製の人工筋肉で指を動かす手袋を商品化しているが、動力源として電池と空気ボンベを用いていた。今回の装置では新たに開発したゲル状樹脂の人工筋肉を用い同社が各パーツを製作、同大大学院の栗田雄一准教授(人間工学)が設計と機能評価を担った。

 栗田准教授によると、動力源が不要な人工筋肉式の身体支援装置は世界でもまだ実用化されていないという。ダイヤ工業が特許出願中。計画では耐久性向上や、装着部位のバリエーションを増やすなど改良し、2020年までに商品化する。

 30日、同大東広島キャンパス(東広島市)で発表会があり、太もも用の試作品で動作を実演した。ダイヤ工業の小川和徳研究部門長は「手軽に筋力をサポートできる道具として実用化し、高齢者らの生活の質向上に役立てたい」。栗田教授は「動力が不要なので使う場所を選ばない。身体の不自由な人向けのスポーツ用具や、介護現場でヘルパーを支援する機能性ウエアなどにも用途が広がれば」と話した。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年11月30日 更新)

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