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脂肪肝など防ぐタンパク質を特定 岡山大大学院の和田教授ら

和田淳教授(左)と片山晶博さん

 岡山大大学院の和田淳教授(糖尿病内科)、大学院生の片山晶博さん(同)らの研究グループは、脂肪肝などを防ぐタンパク質を特定した。このタンパク質が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH=ナッシュ)患者の血液中では高濃度になっていることも確認。簡易な診断や、新しい治療薬の開発につながる成果と期待される。

 NASHは飲酒する習慣のない人に、アルコール性肝炎と似た症状が出る病気。肥満や糖尿病などが原因として指摘されている。脂肪肝から肝炎を引き起こす。肝組織が線維化し、壊死(えし)した場合は肝硬変へと進行する。

 グループは全身の筋力が低下する神経難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行を制御する働きがあるなどと報告されているタンパク質「Gpnmb」に着目。このタンパク質の量を過剰にしたマウスと、野生型のマウスに高脂肪、高ショ糖の食事を与え、肝臓の状態を比較したところ、タンパク質を多く持つマウスの方が、脂肪肝が抑制され、線維化も進んでいなかった。

 さらに、健康な人とNASH患者の血液を検査。病気が進行した人ほど、このタンパク質の血中濃度が高かった。グループは「タンパク質が増えることで、肝臓を守り、病気の進行を妨げる役割を果たしているのではないか」と分析している。

 これまで、進行性のNASHの確定診断には肝組織の一部を採取して検査する必要があったが、このタンパク質の血中濃度を測定するといった簡単な診断法の開発が期待される。

 成果は11月中旬、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。和田教授は「このタンパク質が肝臓でどのように作用しているかなどを、より詳しく研究していきたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年12月06日 更新)

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