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高齢者感染症対策に乳酸菌飲料 福山や鹿児島の施設で体調管理

施設での食事を楽しむ入所者のお年寄り(福山市・プレジール箕島提供)

乳酸菌シロタ株の顕微鏡写真

 気温の低下と空気の乾燥が進む季節を迎えた。ウイルス性感染症への対策が欠かせない。「手洗い」「うがい」の徹底はもちろん、体調をしっかり管理して感染リスクを減らすことも必要だ。乳酸菌を含む食品を通じて、高齢者の体調を管理し、感染症のリスク低減を目指す施設の取り組みが注目されている。

 福山市の特別養護老人ホーム・プレジール箕島では7年前、管理栄養士の山本陽子さんの発案で、経管栄養を受けている入所者に1日2回、乳酸菌を含む整腸剤を投与した。すると、「以前は持病の悪化や体調不良で1年のうち通算3カ月は病院に入院していた人が、ほとんど入院しなくなった」と言う。そこで、食事を取れる人にも週1回、「乳酸菌シロタ株」を含む飲料を提供しながら、自費購入も推奨したところ、継続摂取している人には便通の改善が見られ、体調を崩す人が明らかに減少した。山本さんは「ノロウイルスの感染もない。何よりも入所者の体調がいいと、ケアがしやすくなった」と評価する。

 鹿児島県指宿市の指宿温泉病院は、96人の長期療養患者のほとんどが高齢者。管理栄養士の山口智恵美さんは、患者の免疫力アップを意識して4年前から「乳酸菌シロタ株」を含む飲料を朝食時に提供している。

 経管栄養を受けている患者もいるため、食事ができる約70人に牛乳と乳酸菌飲料から好きな方を選んでもらう方式でスタート。7割の患者が乳酸菌飲料を選んだ。継続摂取している人は便通が良くなるなど体調が明らかに改善した。感染症対策としても「周辺の施設でノロウイルスの感染例が報告されても、この病院ではなかった」と山口さん。乳酸菌の効果に手応えを感じている。

 乳酸菌など善玉菌を継続的に摂取すると、腸内環境が改善される一方、感染症にかかっても軽くすむといった事例が報告されている。しかし、免疫力向上につながる具体的メカニズムそのものは解明されていない。

 食生活と免疫などについて研究している神奈川工科大学の饗場直美教授は「年齢とともに免疫力は衰えるが、腸内環境の改善が(ノロウイルスなど)腸管での感染症軽減に役立っている可能性がある。薬剤と違って、食品は急激な効果がないが、安全性の面では人間が長年にわたって食べてきた経験が生きていると言える」と指摘。食生活から健康維持にアプローチすることへの重要性を強調した。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年12月07日 更新)

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