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気管内挿管や薬剤投与可能 「救命士」が増加 岡山県内 現在62人(延べ)治療向上期待 長い実習、現場負担も

救急救命士が気管内挿管に使う器具。薬剤投与と合わせ救命率向上が期待される

 救急車で心肺停止患者を搬送する際、気管内挿管や薬剤投与ができる救急救命士が岡山県内で増加している。救命率向上に向けて法整備が進んだためで、現在延べ六十二人。最終的には県内の救命士全員(二百九十三人)に拡大する予定だ。講習や実習に時間がかかり、現場の業務をどうやりくりするかが課題だが、県は「救急医療の高度化に対応できる救命士の養成に力を注ぎたい」としている。

 岡山市消防局中消防署の救急救命士三宅亮臣さん(45)は今年五月、高齢女性を搬送する救急現場で、初めて気管内に挿管した。携帯電話で医師の指示を受けながら管を入れ、気道を確保した。結局、命を救うことはできなかったが「これまで器具で食道を閉鎖するなどし気道を確保してきたが、気管内挿管の方が確実だと実感した」と話す。

新たな資格

 救命士制度は新たな国家資格として一九九一年にスタートしたが、気管内挿管や薬剤投与は医療行為に当たるため、救命士が行うことはできなかった。二〇〇四年三月、業務拡大の声を受けて厚労省令が改正され、医師の指示の下での気管内挿管が可能に。さらに今年四月には強心剤の投与ができるようになった。

 救命率は「心肺停止後、一分ごとに10%下がる」と言われる。消防庁救急救助課は「現場レベルで迅速に処置できれば、命が助かる例は確実に増える」と言う。

 県内の認定機関である県メディカルコントロール協議会の認定を受けた救命士は、挿管が四十四人、薬剤投与が十八人。今年七月までに救命士による気管内挿管は二十二件、薬剤投与は二件あった。実績はまだ少ないが、救命率向上に大きな期待が持たれている。

170時間の座学

 一方、救命士が現場で挿管や薬剤投与を行うためには長期間に及ぶ講習が義務づけられる。

 挿管の場合、救命士は麻酔科医による六十五時間の講義を受け、三十例以上の病院実習が必要。薬剤投与も点滴と薬剤投与を十一例実習するほか、百七十時間に及ぶ座学を受ける必要がある。

 挿管の実習では、実際に対象となる患者が搬送されて来るまで待つ必要があり、「実習だけで一―三カ月かかるケースが多く、現場の負担は大きい」という声もある。

 県消防保安課は「勤務シフトを工夫するなどして対処し、救急体制を強化したい」。県メディカルコントロール協議会の井戸俊夫副会長は「一分一秒を争う現場で適切な治療ができるよう指導を続ける」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年10月31日 更新)

タグ: 医療・話題

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