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(1)適度な運動で健康に 大西病院理学療法士 久保忠司

 先日は岡山県でもおかやまマラソンが初開催され、「運動習慣が健康を維持し、健康寿命を長くする」という意識が浸透し、中高年齢者の間でもランニングや各種の運動がブームとなっています。自らの健康を意識する人が増え、その一方で高齢になるとともに家に閉じこもりがちになり、最終的に要介護や寝たきりになってしまう方もいます。

 加齢とともに筋の萎縮が生じ、筋力の低下が生じることは生物学的特性として避けることはできません。筋線維数は25歳をピークとして65歳までのおよそ40年間で25%減少するとされ、80歳の高齢者の筋力は、自らのピーク時より50%まで低下するとも言われています。また、筋線維は速筋(白筋)と遅筋(赤筋)とに大別され、「速筋」は瞬発的な運動に使われ、大きな力を出せる代わりに疲れやすいという特徴を持っています。一方、「遅筋」は持久的な運動に使われ、大きな力は出せないが疲れにくいという特徴を持っています。加齢とともに遅筋線維と比較して速筋線維が著明に減少するとも言われています。

 ランニングや各種の運動を習慣的に行うことは生活習慣病の予防に有効ですが、その一方で自身の運動機能に対して過剰な運動は身体に悪影響を及ぼす危険性を秘めていることも事実です。実際、臨床の場でもやりすぎや使いすぎによる腰痛や膝痛の方をよくお見掛けします。

 運動処方は、強度(努力運動レベル)、量(1回に行う運動量)、頻度(運動を行う回数)の3要素を考慮する必要があります。中高齢者は若年者と比べて運動後の筋損傷の程度が大きく、回復にも時間がかかります。これらのバランスは個人の能力や生理的要因に左右されますが、目安となるものにメッツ(安静時を1として何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示したもの)があります。表を参考に、自らに適した運動を行ってみてください。運動の持続時間は30分程度か、それ以上が勧められますが、気楽に会話できるくらいの運動強度である必要があります。また、一つの運動や作業を長時間行うのではなく、さまざまな動作を取り入れ、体のいろいろな部分を刺激することもポイントとなります。

 可能であれば毎日続けられる運動が勧められますが、週に2、3回でも効果があると報告されています。高齢の方は日常生活で動くだけでも運動量を確保でき、バランスの運動を取り入れるとさらに効果的です。次回は、もう少し詳しくどのような運動をどれくらいの時間行ったらいいか、詳しく説明していきたいと思います。

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 大西病院(玉野市田井、0863―33―9333)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年12月21日 更新)

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