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(6)医療費助成制度について 倉敷スイートホスピタル地域ケアセンター主任 井川弓子

【図1】

【図2】

【図3】

井川弓子主任

 今回、当院のリウマチ患者からの相談が多い「医療費助成制度」についてお話させていただきます。医療機関の中での福祉に関わる専門職として医療ソーシャルワーカー(以下MSW)という職種があります。私たちMSWは保健・医療・福祉の分野において、社会福祉の立場から患者やご家族の疾病に伴う不安のほか、医療費や就業などの問題解決へ向けて、サービス調整や活用支援を行います。特に医療費助成制度は制度内容が複雑で分かりにくく、ほとんどが申請主義といった理由から、円滑に制度活用へ至っていない方々がおられます。

 これから少し複雑な制度の話をしますが、制度の内容そのものより、それらの制度をうまく活用し、満足度の高い医療サービスを受けていただけるよう、私たちMSWを活用していただけたらと思います。

▼高額療養費制度について 

 高額療養費制度とは、1カ月の自己負担金が一定以上かかった場合、それを超えた額が払い戻される制度です。(図1・2)医療費が高額になると分かっている場合は、事前に「標準負担額・限度額適用認定証」を医療機関の窓口へ提示する方法が便利です。

 また、高額療養費として払い戻しを受けた月数が1年間(直近12カ月間)で3カ月以上あった場合は、4カ月目から自己負担限度額がさらに引き下げられる「多数該当」という制度があります。多数該当は、同一保険者で適用されます。ただし、国民健康保険から協会けんぽに加入した場合などの保険者の変更時や退職して被保険者から被扶養者への変更時などの場合は、多数該当の月数に通算されません。

世帯合算とは!?        

 さらに医療費の負担を軽減する仕組み「世帯合算」という制度があります。お1人の1回分の窓口負担では高額療養費の支給対象とならなくても、複数の受診や同じ世帯にいる他の方(同じ医療保険に加入している方に限る)の受診について、窓口でそれぞれお支払いになった自己負担額を一カ月単位で合算することができます。その合算額が一定額を超えた時は、超えた分を高額療養費として支給されます(図3)。それは70歳で区切られており、

 〇70歳以上の方 自己負担額をすべて合算できます。

 〇70歳未満の方 受診者別に次の基準により、それぞれ算出された自己負担額(月額)が21000円以上のものを合算することができます。

 次に合算対象について2つの要点を説明します。

 〈要点1〉医療機関ごとに計算します。同じ医療機関であっても(1)医科入院(2)医科外来(3)歯科入院(4)歯科外来―を分けて計算します。

 〈要点2〉医療機関から交付された処方せんにより調剤薬局で調剤を受けた場合は、薬局で支払った自己負担額を処方せんを交付した医療機関に含めて計算します。

▼重度心身障害者医療費助成制度について   

 心身に重度の障害がある方を対象に医療費の自己負担額を軽減する制度です。対象となる方が未成年者などの場合には保護者の方などに医療費が助成されます。この制度は都道府県や市町村が実施しており、助成の対象になる障害の程度として(1)身体障害者手帳1級・2級・3級の一部(2)療育手帳A(各自治体で名称や判断基準が異なります)(3)後期高齢者医療制度の障害認定を受けている方などが対象となる場合があります。市町村によっては、精神障害者保健福祉手帳1級所持者が対象に含まれる場合もあります。また、これらの受給には所得の制限の規定があります。

▼皆さまへお伝えしたいこと         

 このように、社会保障制度や医療福祉制度はその基となる法律も多岐にわたり手続きも複雑です。前回までの記事で述べましたように、関節リウマチ診療には多職種によるチーム協働が重要です。そのうち、私たちMSWは、一人ひとりの患者の「困っていること」「悩んでいること」「不安なこと」に向き合い、医師、看護師とともに最も適した制度への導きを通じて、患者本人だけでなく、ご家族を含めた皆さまのQOL(生活の質)向上を図ります。

 その上で、私たちMSWは、当リウマチセンターの枠を超えて、他の病院や施設との地域連携も行っていきます。

 医療・福祉・介護などに関することでお困りの方はどなたでも遠慮なくご相談下さい。皆さま方の、喜びや希望に満ちあふれる生活を望んでおります。

   ◇

 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 いかわ・ゆみこ 川崎医療福祉大卒。医療ソーシャルワーカー、社会福祉士。倉敷廣済病院、倉敷市福田高齢者支援センター(地域包括支援センター)社会福祉士など経て2014年1月から倉敷スイートホスピタル。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年12月21日 更新)

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