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認知症向けロボットに一定の効果 岡山市、介護機器レンタルで中間成果

パロ

うなずきかぼちゃん

 岡山市は、国から認定された総合特区に基づき全国で唯一行っている介護機器6種類のレンタル事業の中間成果をまとめた。主に認知症の人のコミュニケーション力や問題行動の改善を目的としたロボット2種類はいずれも一定の効果が見られた。ただ、他の4種類も含めて利用者数は伸び悩んでおり、精度の高い検証を行うためにも一層の啓発が求められている。

 介護保険制度で給付の対象外となっている6機器を介護保険適用と同じ1割負担で希望者に貸し出している。特区認定期限の2017年度まで成果を検証し、成果が確認できれば18年度以降、介護保険の給付対象品目に加えるよう国に働き掛ける。

 アザラシの形をしたロボット「パロ」は人工知能が内蔵されており、なでると鳴いたり目を細めたりする。14年2月~15年3月、歩き回る、暴力を振るうといった認知症の問題行動の頻度を数値化する「認知症行動障害尺度」を利用者について調べたところ、スタート時は平均で23・2点だったが、14カ月後には3・2点と20ポイント改善し、効果が裏付けられた。

 男児を模したロボット「うなずきかぼちゃん」は、話し掛けると「うんうん」「そうなんだ」などと400語の返答がある。14年11月~15年6月の調査で利用者約20人の健康状態が平均で7ポイント良くなった。

 このほか、センサー内蔵のエアマットをふとんの下に敷いておけば、要介護者が寝ているかどうかを離れた場所からでも確認できる「おだやかタイム」、介助者が要介護者の体位変換を手伝う際に使用する腰部サポートウエア「ラクニエ」なども、利用者から好意的な意見が寄せられているという。

 しかし、利用者は、最も多い「うなずきかぼちゃん」でも計約100人、「パロ」は計約50人。他の4機器も各1~40人にとどまっている。短期間で解約し、効果が検証できないケースも少なくないという。市は機器を紹介するちらしを要介護認定決定通知書に同封するなどしてPRしている。

 市医療政策推進課は「利用者をもっと増やし、物忘れが改善したかとか、機器の使用を途中でやめるといったん改善した認知機能や問題行動が再び悪化するのかなど、詳細に分析したい」とする。

 市は13、14年度に公募して6機器を選定。16年度に新たに数種類を追加する予定。

 総合特区 国が2011年度に設けた制度で「国際戦略総合特区」と地域の活力を高める「地域活性化総合特区」の2種類。岡山市は13年2月、地域活性化で指定を受け、デイサービスにより要介護度を改善させた事業所に奨励金を支給するデイサービスインセンティブ事業なども行っている。成果が実証されれば、同様の取り組みが全国で実施されるようになる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年01月07日 更新)

タグ: 介護

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