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乳がん闘病体験のエッセー出版 福山の桑田さん、心情分かりやすく

乳がんの闘病体験をつづったエッセー「それは、スィーツを夢見る日々。」

桑田直美さん

 福山市、グラフィックデザイナー桑田直美さん(55)が、乳がんの闘病体験をつづったエッセー「それは、スィーツを夢見る日々。」を出版した。率直な文章とかわいらしいイラストで、当事者の心情を分かりやすく伝える。

 桑田さんは市内の広告代理店に勤めていた2009年2月、会社の健康診断をきっかけに告知を受けた。手術後8カ月間の抗がん剤治療の苦しみや、支えとなった言葉などを日記や漫画で書き留めていたという。

 告知の日、髪を失うことは「絶対にイヤ」だと思ったこと、病院内の七夕飾りに込められた患者らの願いに目頭が熱くなったこと…。一人の女性が命と向き合う日々が、切々と表現されている。

 副作用などのため、代理店を退職。徐々に体力が戻った12年から勤務する小山オフセット印刷所(福山市大黒町)の小山正社長(62)に当時の日記などを見せたところ、出版を勧められた。

 当初は「つらい気持ちがよみがえりそうで、なかなか当時の記憶と向き合えなかった」と桑田さん。5年間のホルモン治療を終え、15年2月に再発の可能性が低いと診断を受けたこともあり、あらためて執筆を決めた。

 書きためていた文章とイラストに加筆修正。闘病生活の中で心に残った映画や書籍、医療費の制度を紹介するページもある。題名は、抗がん剤治療により一時、味覚を失った経験から。「“元気になったら大好きな甘いものを食べる”ということが希望になったと同時に、食べ物がおいしいのは健康だからなのだと痛感した」と振り返る。

 桑田さんは「実際に病気と闘っている人たち、それを支える周囲の人たちの心を少しでも軽く、明るくすることができればうれしい」と話している。

 四六判、72ページ。1080円。小山オフセット印刷所発行。5日から広島県内の主な書店で販売している。問い合わせは同社(084―922―0280)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年01月15日 更新)

タグ: がん女性医療・話題

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