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(3)乳がんの画像診断 岡山大学病院乳腺・内分泌外科 溝尾妙子

スピキュラを伴うしこり

形がいびつで1カ所に集中する石灰化

造影されたしこり。乳頭に向かって広がっている

(左)腋の下の転移(右)他臓器への転移診断=多発骨転移像

溝尾妙子医師

 今回は、乳がんと診断されるまで、さらに診断されてから治療までにどのような検査を行うか、お話しします。乳がんの画像診断はマンモグラフィーとエコー、乳がんの正確な範囲や転移の判断には乳房MRIやPET―CTを行い、確定診断のためには細胞診や組織診を行います。

【マンモグラフィー】

 マンモグラフィー(図1)は乳房専用のエックス線装置で、40歳以降の乳がん検診や医療機関の初診時にまず行う検査です。乳房をしっかり引き延ばし厚い板で圧迫して撮影しますが、これは乳房全体を撮影し、見落としをなくすためです。撮影時に痛みを伴う方もいらっしゃいますが、我慢できない場合は技師にお伝えください。

 撮影された写真は図2の通りです。マンモグラフィーで見るべき所見は「しこり」「石灰化」「構築の乱れ」です。

 しこりは白い影として映ります。しこりの濃度、辺縁、境界の性状から良性・悪性を判断します。形が不整、辺縁に凹凸があり、とげ状の突起(スピキュラ)は乳がんに特徴的です。石灰化は白い点状の影(図3)で、多くは乳腺症や良性のしこりで、乳房全体に広がる石灰化や粗大な石灰化は良性のことが多いです。微細で、一部に集中したり、乳頭から放射状に広がるタイプの石灰化は乳がんの可能性もあり注意を要します。「構築の乱れ」は乳がんが存在する場合にできる乳房のゆがみです。

 乳腺組織が発達している方、特に40歳未満の若い方は、マンモグラフィーでは乳腺全体が真っ白に映り、そこに隠れているしこりが分かりにくいことがありますので、乳腺エコーをお勧めします。

【乳腺エコー】

 ベッドに仰向けになり、超音波を受発信する探触子(プローブ)を乳房に当てて検査をします=図4。しこりがあるかどうか、またしこりがある場合は形や内部構造などから良性か悪性かを判断します。通常、円形で乳腺との境界が明瞭なしこりは良性で、不整形で乳腺との境界が不明瞭なしこりは悪性のことが多いです。

 エコーでは乳腺組織が発達してマンモグラフィーでわかりにくい人でもしこりを検出でき、被ばくがないのが利点です。しかし、マンモグラフィーで見える「石灰化」はエコーではわかりにくいことが多いです。

 乳がん検診のマンモグラフィーで要精査となった方は、専門外来でまずエコー検査を行い、必要に応じて細胞診や組織診を行います。

【乳房MRI】

 乳がんと診断された場合に、広がり、多発病変、反対側の病変を確認するために行うことが多いです。手術を行う際に、乳房温存術の適応や切除範囲を決定するのに有用です。造影剤を使用し、うつ伏せの状態で撮影します。がんの部位は図5のように造影され、乳管内の進展範囲までわかります。

【PET―CT】

 乳がんと診断された場合に、腋(わき)の下のリンパ節や他の臓器に転移がないかを確認するために有用な検査です。FDGというブドウ糖と似た薬剤を注入し、がん細胞のような活発な細胞にFDGが取り込まれます。その取り込まれた部位を探すことで転移部位を見つけることができます=図6

【細胞診・組織診】

 画像で良性か悪性か区別がつかない場合や、乳がんが疑われる場合は、確定診断のための穿(せん)刺吸引細胞診(細い針を刺して細胞を吸い取る検査)や針生検(局所麻酔を行い、少し太い針を刺して組織を取る検査)を行います。通常はエコーで映るしこりを確認しながら行います。

 エコーでは映らず、マンモグラフィーの「石灰化」でがんが疑われる場合はマンモトーム生検を行います。マンモグラフィーを撮りながら、石灰化病変の位置をコンピューターで解析して、石灰化の部位に針を正確に刺して組織を吸引して採取します。

 みぞお・たえこ 新見高、福井医科大卒。水島協同病院で初期研修後、岡山大の関連病院で外科研修。2011年より岡山大病院に勤務。医学博士。日本外科学会外科専門医、日本乳癌学会乳腺専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年01月18日 更新)

タグ: がん女性岡山大学病院

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