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2月に岡山で日本肘関節学会学術集会 橋詰博行会長(笠岡第一病院長)に聞く

橋詰博行会長

 日常の動作からスポーツまで幅広い運動機能をつかさどる肘。その肘の外傷・疾患をテーマにした「第28回日本肘関節学会学術集会」が2月12、13日、岡山コンベンションセンター(岡山市北区駅元町)で開かれる。国内外から約800人の整形外科医が集う予定だ。同学術集会の会長を務める橋詰博行笠岡第一病院長に、肘の病気や治療法などを聞いた。



 ―肘にまつわる代表的な疾病を教えてください。

 大きくは、骨折、脱臼、靱帯(じんたい)損傷といった外傷、スポーツに関連する障害、関節リウマチや変形性関節症といった肘の炎症や拘縮、末梢神経障害、先天異常などの疾患があります。

 ―外傷にはどんなものがありますか。

 肘の外傷は子どもに多く、中でも上腕骨顆上(かじょう)骨折は重要です。神経や血管が損傷され指が動かなくなったり、骨が曲がって癒合する合併症のリスクがあるからです。一方、肘内(ちゅうない)障は子どもが手を引っ張られたことで靱帯から外側の骨が外れかかることで起こります。こちらは手で簡単に整復でき、痛みが消えてすぐに腕を動かすことができます。

 スポーツ関連では、野球肘が代表的な成長期の疾患です。ボールを投げすぎ肘への負担が過剰になり、軟骨がはがれて痛みます。ひどい場合は骨に穴を開けたり、骨や軟骨を移植する手術をすることもあります。

 ―成人に多い神経障害の疾病は。

 加齢などによって肘の内側にある尺骨神経が圧迫され、小指がしびれる肘部管症候群が代表的です。スポーツや重労働で肘関節を酷使することにより骨の突起ができる変形性肘関節症は肘部管症候群を引き起こす主な原因となります。また、この変形性関節症と関節リウマチは肘の人工関節置換術が必要になる二大疾患です。

 ―先天異常にはどんなものがありますか。

 橈(とう)尺骨癒合症といって、前腕の橈骨と尺骨が先天的に肘周辺で癒合し、前腕の動作が制限される疾患があります。

 ―手術は内視鏡の一種である関節鏡下手術が広まっているそうですね。どういうふうに治療をするのですか。

 最近は応用できる外傷・疾患が増えています。皮膚の小さな切開から関節鏡を挿入します。先端には高性能カメラが付いており、モニターに映し出された鮮明な画像を見ながら、手術をします。従来の切開に比べ、筋肉などの組織をほとんど傷つけず、傷跡も小さいので早期リハビリが可能です。

 ―学術集会ではどのようなことを議論するのでしょうか。

 「肘関節診療を支える科学」がテーマで、基礎医学である解剖学、バイオメカニクスや外科手術シミュレーションという最先端テクノロジーについて議論します。

 解剖学については、筋や腱(けん)、神経がどのように傷んでいるのか、どういうふうに修復しなければいけないのかについて最新の知見を検討します。バイオメカニクスではコンピュータを駆使して運動機能の動作を解析することで、肘関節の複雑な動きを解明します。外科手術シミュレーションは三次元画像を用いて骨などの変形度合いや骨を切る角度、人工関節の適合性などを手術の前に詳細に分析するもので、近年、導入する施設が増えています。

 ―学術集会の会長としての抱負を。

 高齢化やさまざまなスポーツの普及により、整形外科の領域は年々広がっています。医用工学と密接に関連した分野でもあります。国内外の一流の医師の講演やシンポジウムを予定しており、これらを通じて、最新の知見を得て研さんを重ね、日々の診療に生かしてまいります。

 はしづめ・ひろゆき 岡山大医学部卒、同大学院医学研究科修了。岡山済生会総合病院、岡山大助教授などを経て、2005年から笠岡第一病院院長。日本整形外科学会専門医、日本手外科学会専門医、日本リウマチ学会指導医、日本リハビリテーション医学会指導責任者、岡山大臨床教授。63歳。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年01月18日 更新)

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