文字 

「見えない障害」てんかんに理解を 支援NPO、倉敷で31日シンポ

 てんかんや高次脳機能障害の患者と家族を支援するNPO法人「おかやま脳外傷友の会モモ」(倉敷市西坂)は31日、外見からは分かりにくい「見えない障害」への理解を深めてもらうため、初のシンポジウムを倉敷市で開く。外出中にてんかんの発作で意識を失い、そばにいた女児に倒れかかったところ、痴漢扱いされたという県内男性(45)の訴えがきっかけだ。

 男性によると、2014年11月、県南の商業施設のレジに並んでいたとき、発作に襲われ、意識を失った。前にいた女児にもたれかかるように倒れたらしい。数分後に意識が戻ると、女児の母親から「娘の体を触った」と詰め寄られた。障害者手帳を母親に見せ、故意ではないと説明したが、警察官を呼ばれた。

 警察署で当時の状況の説明を求められた。意識がなかった間のことは、うまく話せなかった。数時間に及んだ事情聴取の途中で、再び発作に襲われた。それにより警察官は「持病は本当のようだ」と理解したのか、解放されたという。

 男性はその後、外出時には「発作で無意識の異常行動を取ることがある」との医師の診断書をパスケースに入れ、首から下げるようにしている。

 男性の話を受け、同NPOは病気や障害に対する理解を広めようと、シンポジウムを企画した。川崎医療福祉大(倉敷市松島)の種村純教授(臨床神経心理学)が、てんかんや高次脳機能障害の症状を解説。高次脳機能障害の兄弟がいる南石知哉弁護士=大阪弁護士会=も、患者がトラブルに巻き込まれた際、周囲がどう対応すればいいか説明する。

 南石弁護士は「男性のケースでは、疾患や障害に対する知識と理解が広まっていないために誤解が生じ、相手側の過度な反応を引き起こしてしまったのではないか。全国でも同じようなトラブルは起きているだろう」と指摘。同NPOの滝川敬三会長は「普段の様子が健常者と同じように見えるため、誤解されたり、何かあってもきちんと対応してもらえなかったりすることがある。そうした現状に目を向けてもらい、改善につながれば」と話している。

 シンポジウムは31日、くらしき健康福祉プラザ(倉敷市笹沖)である「障がい者の人権をとりまく社会のバリアを考える集い」の中で行われる。集いは午後1時~4時。無料。定員280人。問い合わせは同NPO(086―463―9400)。

 てんかん 脳の神経細胞が過剰に活動することで起こる疾患。発作の頻度や種類は患者ごとに異なるが、意識を失うことがあるほか、けいれんや体の硬直などの症状がある。多くの場合、薬を服用すれば発作のコントロールが可能で、通常の生活を送ることができる。厚生労働省の推計では、患者は全国に約100万人。

 高次脳機能障害 事故や病気などで大脳の一部が損傷して現れる後遺症の総称。言語や記憶などの知的機能に障害が出る、計画を立てられないなどの症状がある。損傷を受けてしばらくしてから突然現れ、症状は損傷箇所によって異なる。厚生労働省によると、国内の患者数は推定で約27万人。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年01月28日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ