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免疫抑制や抗がん作用 臍帯血から新細胞発見 林原生化研

林原生物化学研究所が発見した新細胞「HOZOT」(マイクロは100万分の1)

 林原グループの林原生物化学研究所(岡山市下石井)は四日、ヒトのへその緒の血液・臍帯血(さいたいけつ)の白血球に含まれる新たな免疫細胞を発見したと発表した。試験管実験で、免疫の過剰反応を抑える機能や、抗がん作用を確認。十一日から大阪市で開かれる日本免疫学会で発表する。

 臓器移植後の拒絶反応の抑制、がんやアレルギー治療などへの応用が期待され、同研究所は新細胞の発見についての特許を出願した。

 血液中では、免疫反応を活性化させる細胞と、その作用を抑える細胞がバランスを取ることで免疫が適正に働き、バランスが崩れた時にアレルギーなどが出る。新細胞は、抑制する役割を持つ「制御性T細胞」の一種で、白血病治療などに使われる臍帯血の培養実験過程で見つけた。

 同研究所は試験管実験で、新細胞を注入した場合、免疫反応を活性化させる細胞の増殖が約十分の一に減ることを確認。ヒトの大腸がん細胞の91%を破壊する結果が出たほか、炎症を抑える効果を持つ物質「インターロイキン―10」を作る能力も高いという。

 臍帯血に含まれることから、へそを意味する「臍(ほぞ)」とT細胞にちなみ、「HOZOT(ホゾティ)」と名付けた。

 今後、作用メカニズムの解明を進めるとともに、医薬品メーカーや大学などから共同研究を募り、臨床応用の可能性を探る。同研究所は「動物を使った生体実験など研究レベルを上げ、治療法や医薬品の開発につなげたい」としている。


リウマチなど効果を期待

 谷本光音・岡山大大学院医歯薬学総合研究科教授(病態制御科学)の話 興味深い発見だ。具体的なメカニズムの解明はこれからだが、研究結果を見ると従来の制御性T細胞よりも制御能力が高いようだ。リウマチなど自己免疫疾患への効果が期待できるのではないか。研究が進むことを望む。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年12月05日 更新)

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