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2月に岡山で日本褥瘡学会中四国学術集会 岡博昭会長(笠岡第一病院副院長)に聞く

岡博昭会長

 寝たきりなどで、圧迫された皮膚がただれたり、傷ができる褥瘡(じょくそう)(床ずれ)。適切な治療・管理は、医療、看護、介護と各分野に関わる。最新治療や予防、在宅での管理などを議論する「日本褥瘡学会中国四国地方会学術集会」が28日、岡山コンベンションセンター(岡山市北区駅元町)で開催される。これを前に、同地方会会長の岡博昭・笠岡第一病院副院長(形成外科)に聞いた。

 ―褥瘡を専門とする診療科はありますか。

 今のところ日本では、特定の診療科で診る形にはなっていません。日本褥瘡学会の所属医師は形成外科や皮膚科をはじめ、外科、内科、整形外科、認知症患者を多く診療する精神科など多岐にわたります。医師だけでなく、看護師や介護士、リハビリに携わる療法士、薬剤師、栄養士などが所属し、多職種によるチームアプローチが欠かせません。

 ―褥瘡のメカニズムは。またどのような人がなりやすいですか。

 体の同じ部分に体重がかかり続けることで血流が悪くなり、十分な酸素や栄養が行き渡らなくなってできます。悪化すれば細菌感染などが起こり、組織が壊死(えし)します。当然ながら、寝たきりなどで自分自身で体位変換できない人がなりやすく、むくみ(浮腫)が強い▽栄養状態が悪い▽やせて骨が突出している部分がある▽関節の可動範囲が狭くなっている(拘縮)―などの症状がある人は特に危険度が高い。高齢者が当てはまりやすいです。寝たきりというと、ベッドに横たわったままの人を想像しますが、車いす生活の人も、いす上で体を動かせない場合は寝たきりと同じ状態で、褥瘡ができてしまう。十分な注意が必要です。

 ―治療方法は。

 日本褥瘡学会では治療のガイドラインを策定し、数年ごとに最新情報を反映。一般の人も読めるように公開しています。現在では、細菌感染などで膿(うみ)が出ている時期は、十分に洗浄して乾燥。肉が盛り上がってきた後は傷口を覆って湿潤環境を保つのが一般的。最近注目されているのは専用器具が必要だが治療効果が高い陰圧閉鎖療法。膿を洗浄後、傷口を特殊なスポンジで覆い、傷口から出る滲出(しんしゅつ)液によって湿潤環境を保ちつつ、余分な滲出液を吸引チューブで吸い出し、陰圧状態に。潰瘍(組織壊死による皮膚欠損)が縮小し、新たな感染による悪化を防ぐほか、治りが早くなります。

 ―一度褥瘡になると完治には長い時間がかかります。予防法は。

 かつては医療・介護者が十分な体位変換さえ行っていれば防げると考えられていましたが、危険因子の高い患者の褥瘡を防ぐのは想像以上に難しい。環境を整えることが大切で、体圧を分散するマットレスやクッションなどを患者の状態に応じて適切に選び、使用することが必要です。8年前、私が笠岡第一病院に赴任したころは、同病院の褥瘡発生率は年間約3%でしたが、高機能の体圧分散マットレスを導入し、現在は1%未満になりました。適切な環境調整で予防は可能です。

 ―今回の学術集会のテーマは。

 「入院から在宅医療へ」という流れがある中、入院中は管理できていた褥瘡が、自宅に帰った途端悪化したり、新たに発症しては意味がありません。本学会では、専門の研修を受けた医師や看護師を「日本褥瘡学会認定師」として認定していますが、2014年度からは在宅褥瘡患者の管理を行う「在宅褥瘡管理者」も新たに認定しており、現在は診療報酬の対象となっています。学術集会では、実際に在宅患者の褥瘡管理に取り組む医師や看護師らがワークショップを行い、多職種の医療者や患者家族が連携してケアに取り組む大切さや今後の課題を議論してもらいます。在宅ケアを成功させるヒントが得られるはずです。家族を介護している人はもちろん、「褥瘡管理は看護師におまかせ」という医師も、ぜひ参加してほしい。

◇◇◇

真田氏(東京大大学院教授)が特別講演

 28日の学術集会では、最新の研究成果発表に加え、日本褥瘡学会前理事長(現監事)の真田弘美・東京大大学院医学系研究科教授(老年看護学/創傷看護学分野)が「褥瘡対策最前線2016」と題し特別講演。治療やケアが難しい「足の褥瘡」をテーマに、寺師浩人・神戸大医学部形成外科教授(同学会理事)が講演する。陰圧閉鎖療法についてのセミナーもある。

 当日参加費は中国四国地方会非会員は5000円、学生は1000円。詳しくは学術集会ホームページを参照。問い合わせは運営担当の共同MICE事業部(電話:086―250―7681)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年02月01日 更新)

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