文字 

肺がん治療について 岡山済生会総合病院3医師に聞く

川井治之がん化学療法センター長

抗がん剤治療 体質、希望で薬剤選択 川井治之がん化学療法センター長

 肺がんの抗がん剤治療の対象となるのは、小細胞がん全般と、手術では腫瘍を取りきれない主としてIII、IV期の非小細胞がん。III期は放射線療法と併用し治癒を目指す。IV期は少しでも長生きを目指すのが目的だ。術前に腫瘍を小さくしたり、再発リスクを減らすために手術後に行うこともある。

 抗がん剤は3~4週間おきに投与するのが一般的だが、毎週行うものもある。最初は副作用の程度を見極めるため、数日から2週間程度入院してもらい、2回目以降は外来で行う。

 抗がん剤は、シスプラチン、カルボプラチンのいずれかと、イリノテカン、ペメトレキセド、ドセタキセル、パクリタキセル、S‐1など8種類のいずれかを組み合わせる。つまり全16通りの治療がある。ベバシズマブという薬を加えて3剤を使うこともある。薬効はどれも大きな差はないが、がんの顔つき(組織型)によって効果に差があることもある。副作用の出方が異なるため、患者の体質や希望を踏まえ、薬剤を選択する。副作用は、吐き気や食欲不振、下痢、骨髄抑制といって白血球などが減少することによる感染など、さまざまだ。

 一方、非小細胞がんの一種で、非喫煙者にも多い腺がんに特に有効なのが飲み薬の分子標的薬だ。従来の抗がん剤が正常な細胞まで殺してしまうのに対し、これはがん細胞だけをピンポイントで狙い撃ちする。

 分子標的薬にはゲフィチニブ、エルロチニブ、クリゾチニブなどがある。ゲフィチニブは商品名をイレッサというが、聞いたことのある方が多いだろう。かつては残念なことに副作用の間質性肺炎で多くの方が亡くなったが、現在は、副作用が出る人、効果がある人が解明され、有効な薬として機能している。

 一般的な抗がん剤治療では1年生存率は40~60%程度だが、分子標的薬による治療では3、4年程度の延命を目指す。

 分子標的薬はこれまで喫煙者には使いにくかったが、朗報がある。やはり非小細胞がんの一種で喫煙者に多い扁平上皮がんにも有効だとされる免疫治療薬のニボルマブという新薬が昨年12月に国内で発売された。当院でも近くこれを使った治療を開始する。

 肺がんの最大のリスク要因は言うまでもなく喫煙。生涯罹患(りかん)率といって、非喫煙者が一生のうちにがんになる確率は1~2%だが、1日に20本吸う人の確率は16%もある。男性の7割、女性の2~3割はたばこが原因。ぜひ禁煙をしてほしい。

次ページは「放射線治療 可能性広がる定位照射」

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年03月07日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ