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肺がん治療について 岡山済生会総合病院3医師に聞く

守都常晴放射線治療センター長

放射線治療 可能性広がる定位照射 守都常晴放射線治療センター長

 肺がん治療に放射線治療が適用されるのは、当院で年間約60~70例。腫瘍が取り切れる場合は外科手術が第一選択だが、手術に耐えられないほど状態が悪い、患者や家族が手術を希望しない、肺がんの種類によって手術が有効でない場合などに、放射線治療が選択される。

 小細胞肺がんは放射線治療の効果が比較的高いとされる。根治治療が期待できるのは、がんが肺やリンパ節までにとどまっている「限局性」に限る。治療は朝夕2回照射を週5日、3週間行う「加速多分割照射」が主流。このタイプのがんは悪性度が高いが、この治療で根治率が高くなってきた。

 日本人に多い非小細胞肺がんでは、転移があるなど手術できない場合に放射線治療が選択され、腫瘍の増大を止めることが主な目的となる。1日1回照射で週5日、6週間行うのが基本。脳や骨などに遠隔転移しているケースでは、まひなどの神経症状や骨の痛みなど、がんに伴う各種の症状緩和にも効果を発揮する。

 近年では、治療機器の性能やコンピューター技術の進化によって、より多くの放射線量をピンポイント照射する「定位照射」という選択肢も増えた。10方向から腫瘍へ外照射する方法で、体の前後2方向から照射する通常治療に比べ、病変部に倍の線量を当てることができる。非小細胞肺がんでも根治可能な場合があり、将来的には手術に匹敵する治療となる可能性もある。

 当院では昨年から開始し、2月末までに3例実施している。治療希望者は増えているが、誰でも受けられるわけではない。基本的には手術が難しい高齢、再発患者が対象。高線量のため、食道や気道などの近くに腫瘍がある場合は適用できない。

 いずれの治療も、放射線治療には副作用がある。照射時は食道や気道などの炎症、食欲低下や倦(けんたい)怠感などがあるが、1~2週間で治まる。注意が必要なのは、治療1~2カ月後に発症しやすい放射線肺臓炎。発熱や息切れなどの症状を起こすほか、炎症がひどい場合はせきや息切れが長期間続くケースもある。継続的に観察することが重要だ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年03月07日 更新)

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