文字 

高度治療で双子を無事出産 川崎医科大付属病院

難度の高い手術を乗り越え、生まれた双子の女児を抱く女性(右)と村田医師

 川崎医科大付属病院(倉敷市松島)が、胎盤を共有する一卵性双生児に起こる特殊な病気のレーザー手術を導入し、最初に治療を受けた女性が無事出産した。高度な技術を要するため、治療できる施設は国内で10カ所、中四国地方では唯一といい、女性は15日、生まれた双子と一緒に退院する。

 病気は一卵性双生児の1割程度に起こるという「双胎間輸血症候群」。一つの胎盤につながる血管を通じ、片方の胎児(供血児)の血液がもう一方の胎児(受血児)に取られる格好で血流バランスが崩れ、供血児は発育不全、受血児は心不全などを発症。重症化すると死亡するケースがある。国内では年間250人程度の妊婦が発症するとされる。

 手術は「胎児鏡下胎盤吻合(ふんごう)血管レーザー凝固術」と呼ばれ、妊娠16週から28週未満の妊婦が対象。母体に小さな穴を開け、専用の内視鏡を挿入して2人の血液が行き来する血管をレーザーで焼き固める。2012年から保険適用となった。

 退院する女性は岡山県里庄町、公務員女性(28)。妊娠18週で手術を受け、同37週の今月8日に双子の女児を帝王切開で出産した。「病気や手術のリスクを知って不安もあったが、手術を終え、羊水に浮かぶ赤ちゃんをカメラ越しに見た時はほっとした」と振り返り、「これからの生活についてあれこれ考えられることが幸せ」と話した。

 県内では、川崎医科大付属川崎病院(岡山市北区中山下)で14年1月から30例以上を実施。昨年10月以降はより高度な医療設備の整った同大付属病院で手術を行い、14日現在、5例で成功した。担当する村田晋・産婦人科医長は「手術が成功すれば胎児の救命率は格段に上がる。岡山の交通アクセスのよさを生かし、中四国から広く患者さんを受け入れたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年03月14日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ