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(18)大西病院 積み重ねで人々の笑顔支える

リハビリに励む人たちに、笑顔がある

力を入れる内視鏡検査

 3月初めの晴れた日の午後。空気はまだ少し冷たいが、窓から入る明るい日差しが春を感じさせる。

 大西病院の通所リハビリテーション室。高齢の女性が理学療法士の助けを受けながら膝関節の運動を続ける。そばには歩行器で「前」を目指す人の真剣な表情。傍らのテーブルには笑顔があった。「きれい。うれしいなあ」。銀髪の女性が両手を広げて見せてくれた。カラフルでかわいいネールアートが施されていた。

 通所リハビリには現在約20人が週1~3回来ている。朝8時半、車が病院を出発する。市内を巡って利用者を迎える。検温、血圧などの健康チェック、医師の診察。入浴、昼食などを挟んでリハビリに励み、午後4時ごろ家路に着く。「みんな頑張っています。いつまでも元気で自宅生活をしてほしい」。作業療法士の川上雅代さんがほほえむ。

 訪問看護ステーション「ほほえみ」は、現在看護師4人で在宅患者約20人を看ている。最高齢は94歳。訪問頻度は多い人で週3回という。しかし、訪問看護を数字で計ることはできない。夜、急な呼び出しがあれば小まめに応じるし、末期のがん患者などでは毎日訪問することもある。日々患者と接する訪問看護師からの細かい情報は、医師にとって大きな助けとなる。看護師たちの努力の積み重ねが患者の「今」を支えている。

 村上まり子看護師は「でもね。やっぱり家族かな。脳血管障害で最初は寝たきりだった患者さんを奥さんや息子さん、それに孫も加わって看てね…。そのうちに言葉がはっきりしてきた。車いすで自力移動が可能になり、やがて立位までできるように。そんな時、私たちもやりがいを感じるんです」。うれしそうに話してくれた。



 在宅の人たちに対するもう一つの支えが、同病院の居宅介護支援事業所だ。ホームヘルプやデイサービス、訪問看護といった各種サービスをどのように組み合わせていけば良いか。個々の利用者に合わせてケアプランを作成し、生活を支えている。

 適切なプランを作るには、まず利用者のその時の状況を知らねばならない。「片まひが残ったり言葉が不自由になったり、また全身が衰弱していたり。状況は人によってさまざま。そこをきちんと把握してプランを作らなければ。病院から帰ったばかりの人の場合など、在宅で安心して過ごせるようになるまで毎日その家へ通うこともあります」とケアマネジャーの三宅敦子さん。他の病院にかかっている人も含め、現在約60人の居宅介護に関わっている。求められれば介護認定の判定調査に立ち会い、本人の状況を伝える。

 自分でも直接関わる。高齢者らの状況は日々変わり、問題も起きる。薬を飲み忘れがちなお年寄りがいた。「薬箱を作ったり壁に薬の名前を張り出したり…。このごろ何とかきちんと飲んでくれるようになってね」。そう話す三宅さんの顔がほころぶ。心の通い合いから、血の通ったサービスが生まれる。

 同病院はヘルパーステーションも持つ。2月末には、新たな取り組みとして転倒予防教室を初開催した。今後も定期的に開いていく考えだ。



 内科、胃腸科、肛門科、外科、整形外科を診療科目とし、救急にも積極対応。地域の医療を支える同病院が一方で力を入れているのが、上部・下部消化器の内視鏡検査だ。

 大腸がんを例にとると、部位別のがん死亡者数で男性で第3位、女性では第1位。大腸がんはステージII期までであればほとんどの人が治癒可能で、早期発見・早期治療が重要だが、問題は全国で20%台という検診受診率の低さ。OECD(経済協力開発機構)加盟国中でも最低レベルにとどまる。

 大西敦之院長は「精密検査受診率が低い。便潜血反応陽性と判定された人の約4割が、精密検査を受けていません」と指摘する。外来看護師の谷本瑞枝さん、菅野弥生さんも「自分で勝手に痔(じ)と思い込んだり、忙しいという理由で精検を受けず、みすみす手遅れになった人に出会うと本当に残念です」という。

 同病院はこうした現状を踏まえ、検診を呼びかけるとともに精検では確実で、より苦痛の少ない検査を目指す。大腸がんや胃など消化器系の悪性腫瘍発見へ、病変部をよりはっきり映し出せる最新鋭のレーザー光源搭載内視鏡システムを導入した。

 高速マルチスライスCTを備え、大腸CT検査も行う。もちろん医療機器が整っても、それを生かす医術がなければ意味はない。2014年に就任した大西院長自身が内視鏡検査のエキスパート。昨年春からは岡山画像診断センター(岡山市)と連携し、遠隔画像診断も行っている。

 「自覚症状がない時にがん検診をきちんと受けること。これが当たり前ながら重要です。がんが検診の段階で見つかった場合と、自覚症状が出てから見つかった場合では、5年生存率が大きく異なる。それはデータを見れば明らかです」。日々命と向き合う大西院長は、そう話している。



 大西病院(0863-33-9333)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年03月21日 更新)

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