文字 

被ばく量低減で心臓負担少なく 倉敷中央病院、プログラム導入

より低いエックス線量で高画質の画像を得られる心臓CT

心臓カテーテル検査で撮影した同一冠動脈の画像。従来機種(左)と比べ、新機種は低いエックス線量でも高画質の画像が得られる

座ったまま撮影できる心筋シンチグラフィー

心臓カテーテル検査に使用する血管造影エックス線診断装置

 倉敷中央病院(倉敷市美和)の心臓病センターが、検査や治療時に患者の放射線被ばく量を低減させるプログラムを導入している。2011年から15年にかけてCTや心臓カテーテル装置などを最新機器に更新するとともに、患者の負担をより少なくするため、放射線を出さないMRI(磁気共鳴画像装置)の幅広い活用を目指している。

 同センターは循環器内科と心臓血管外科で構成。CT、MRI、心筋シンチグラフィーを各1台、心臓カテーテル装置6台を備え、心筋梗塞や狭心症、大動脈解離など、さまざまな心臓疾患治療に当たっている。

 11年に導入した心臓専用の次世代マルチスライスCTは、エックス線を発生させる管球を二つ備えており、短時間で検査できるため被ばく量が大幅に低減。カテーテル検査よりも体への負担が少ない。冠動脈の構造や狭窄(きょうさく)を調べられるほか、心臓の弁や血管などを調べることができる。

 カテーテル検査は、CTより詳しく冠動脈などの形状や狭窄を調べる必要がある場合などに行う。より低いエックス線量で高画質の画像を得られる新機種を「アジアで初めて」(同病院)導入し、12年から15年までに全て更新。従来機種と比べ、冠動脈造影検査の被ばく量が平均34%低減している。もちろんカテーテル治療でも、被ばく低減効果は大きい。

 血流を詳しく診る心筋シンチグラフィーは、放射性同位元素を注射して撮影し、心筋の血流やダメージを調べる。これもベッドに寝る形式から座ったまま撮影できる最新式に更新した。15~20分かかっていた撮影時間が5~10分に短縮し、画質など性能は大幅に向上した上で、患者の負担は軽減。現在、被ばく量自体は低減していないが、将来的には放射性同位元素の量を減らしていくことを検討している。

 13年から導入した心臓MRIは、放射線を出さないため被ばくなしに冠動脈の狭窄や心筋の動きを調べることが可能。従来のMRIは心臓など動きがある部位の撮影には不向きだった。撮影・診断技術も向上しており、人間ドックなどCT撮影でなくMRIで代替できる検査に積極的に活用していくことで患者の被ばく量を低減できる。同病院では導入に合わせ、画像診断技術に優れた先進医療機関へ、医師3人を“国内留学”させ、研修を積ませた。

 循環器内科の門田一繁主任部長は「今後もハード、ソフト両面で低被ばく、低侵襲の医療を推進し、患者に優しい高度医療を追求していく」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年03月21日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ