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緩和ケアの経験元に生き方指南 岡山中央病院・金重理事長が書籍出版

著書「看取られる技術」について話す金重理事長

 岡山中央病院の金重哲三理事長が、長く診療に携わり、また終末期の緩和ケアに力を注いできた経験を基に記した「看取られる技術」(カドカワ、1200円)が出版された。終活を思わせる題名だが、中身はよりよい生き方を説いた本と言えそう。

 金重理事長は泌尿器の専門医。がん患者や家族とも多くの対話を重ねてきた。「医療にできることには限界があり、最終的に医療は無力になる」。経験を通じて体感した医療の一面の真実を踏まえ、人の在り方を考察している。

 人は自分自身が自由に発想し、行動していると考える。しかし実は祖先から、また親から受け継いだ遺伝子と、生まれ育った環境に従って「『私』というプログラム」が生まれ、人はそのプログラムに沿って反応しているに過ぎない。そのパターンを、金重理事長は「心の癖」と呼ぶ。人は、出来事と遭遇すると各自の「心の癖」に応じて怒りや欲、怠け、恐れなどさまざまな感情が生まれ、常に苦しむことになる。

 そう説明した上で、金重理事長は歴史に名を残した宗教者らの言葉も交えながら、自分の感情を自分自身で認識するよう心がけること、それが物事をあるがままに眺め、受け入れることにつながると説く。簡単ではないが、そうした生き方を実践するための一つの方策として、「テキパキと、軽々と、明るく、しなやかに、準備万端で」物事に対処していくことだと記している。

 テキパキと、その結果集中して物事に当たる日々を重ねていくことは「心の躾(しつけ)」(金重理事長)であり、医療者が心の躾を怠らないことが、患者へのよりよい対応につながるという。

 金重理事長は「私たちはもちろん全力を尽くすが、最終的に医療は無力。この本を読んだ人たちが、心の持ちようを考えながら日々を過ごしてくれるなら、たとえ将来がんなどになったとしても、より穏やかに向き合えると思う」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年03月21日 更新)

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