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偶然と必然 岡山済生会総合病院院長 山本和秀

 学生のころ遺伝子に興味を持ち、分子生物学者ジャック・モノーの「偶然と必然」という著書を面白く読んだことがあります。この本は、生物の進化と遺伝子の関係、すなわち遺伝子の複製という合目的な現象と進化という創造的な現象を「偶然と必然」という観点から説明しようとしたものです。

 翻って人間社会を見てみると、「偶然と必然」が同じように折り重なって起こっています。自分の人生を顧みても、「偶然と必然」の連続であったように思われます。患者さんとの出会い、研究を始めたきっかけ、上司や同僚との出会い、留学の決定、留学先での出会いなど、どこまでが偶然でどこからが必然なのか漠然としていますが、一連の出来事として起こっています。すなわち、すべての現象が連続しており、ある一つの出来事が原因となり、次の現象へとつながっています。皆さんはこのような感覚を経験されたことはないでしょうか?

 また故事成語として、「人間万事塞翁が馬」という言葉があります。たとえ今が良い状態であっても思わぬ事態によってつらい状態になることもあれば、苦しい状態でも頑張っていたことにより幸福なことにつながるという意味です。これも「偶然と必然」なのかもしれません。

 「偶然と必然」の面白い点は、ある現象が次につながることは単なる偶然の連続ではなく、ある必然的な理由があって次につながるということです。すなわち、何事も必死に取り組んでいると何か次の現象が起こってくるということです。ただこの過程で難しいことは、苦しい状態の中でいかに自分の考えや信念を持ち続けるかということです。そのことができれば、必ず次の何かにつながっていくと思います。

 これからの世代の人々にはさまざまな経験や苦労をして、その中から自分ならではの出会いや発見をしてほしいと思います。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年03月31日 更新)

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