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女性の尿漏れ 気軽に受診を 倉敷中央や岡山大病院など 増える専門外来 新手術、薬で治療効果向上

女性泌尿器外来で扱う主な疾患(表)

寺井章人・倉敷中央病院泌尿器科主任部長

 成人女性の4人に1人が尿漏れを経験しているといわれるなど泌尿器系疾患に悩む女性は多い。ところが、医療機関の泌尿器科は男性患者が大半を占めることもあり、「恥ずかしい」と受診を控えがちだ。そこで、女性向けの専門外来を設ける医療機関が増えている。1月から週2回、女性泌尿器外来を開設している倉敷中央病院(倉敷市美和)の寺井章人・泌尿器科主任部長は「ここ1、2年で新しい手術方法や薬が登場し、治療効果が格段に上がった。年のせいとあきらめず、気軽に受診してほしい」と呼び掛けている。

 尿漏れのほかに多いのが、女性の骨盤の中にある子宮やぼうこう、直腸などの臓器が下がる「性器脱」。こうした病気は、骨盤内臓器を支える筋肉や靱帯(じんたい)など骨盤底の組織が出産や加齢で緩むのが原因という。

 尿漏れは、せきやくしゃみなど下腹に力が入ったときに起こる腹圧性尿失禁と、急に強い尿意が襲う切迫性尿失禁、両方を併せ持つ混合性尿失禁の三つに分けられる。

 女性に多い腹圧性尿失禁はまず、骨盤の筋肉群を鍛える骨盤底筋体操で治療。倉敷中央病院は効果的なやり方を指導するとともに干渉低周波や磁気刺激治療も併用し、「これで七、八割の患者は良くなるだろう」と寺井主任部長。

 それでも効果がなかったり、尿漏れの量が多い場合は手術を行い、幅一センチの人工テープで尿道を支える。同病院が行うのは両内ももの付け根を五ミリ程度ずつ切開しテープを通すTOT手術という新しい方法。「下腹部二カ所と膣(ちつ)一カ所を切る従来のTVT手術はぼうこうなどを傷つける危険性があったが、テープを通す場所を変えたことで安全性が高まった」と寺井主任部長。手術は下半身麻酔で二十分程度。二泊三日の入院で済み、公的医療保険が適用される。

 一方、切迫性尿失禁はぼうこうに通じる神経が働きすぎたり、尿を出すぼうこう排尿筋が不規則に収縮する「過活動ぼうこう」が原因。トイレが近くなる頻尿症候群を伴うことが多い。治療は抗コリン薬でぼうこうが勝手に収縮するのを抑える。昨年、新薬が相次ぎ発売された。口の乾きや便秘の副作用があり、バランスをみて薬を調整する。

 性器脱は重症だと、臓器に押され膣の壁が外へ飛び出したり、尿が漏れることもあり、手術が必要。従来はぼうこうや子宮の周りの組織を縫い合わせ補強したが、再発が多いのが問題だった。これに代わり、人工繊維のメッシュを膣と臓器の間に入れ補強する方法が数年前から普及。専用のメッシュも開発され、治療の主流になると期待されている。

 寺井主任部長は「尿漏れや性器脱は命にかかわる病気ではないが、生活の質に大きく影響する。適切な治療で快適な日常を取り戻してほしい」と語っている。

 同病院の女性泌尿器外来は毎週火、金曜日午後二時~四時。担当は泌尿器科医だが、女性の抵抗感を減らすため婦人科の外来診察室で診療。水曜日午後二時~四時に電話相談(086―422―6038)も受け付けている。岡山大病院(岡山市鹿田町)も毎週木曜日、女性泌尿器科外来を設け、全員女性の医師、看護師が治療に当たっている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年02月17日 更新)

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