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岡山大病院 心筋再生7月にも治験 国内初、保険適用目指す

王英正教授

 重い先天性心疾患の子どもを対象に、本人の幹細胞を活用して心臓のポンプ機能を強化する「心筋再生医療」について、国内初となる臨床試験(治験)が7月にも岡山大病院(岡山市北区鹿田町)で始まる。同大病院は、2011年に世界で初めて心筋再生医療を成功させたことで知られ、企業主導の治験で岡山県外の2医療機関とも連携して症例を重ね、早ければ19年ごろの保険適用を目指す。

 計画では、治験は本年度中に3施設で約40症例を実施。幹細胞を移植する群と移植しない群に分けて比較データを集める。心筋再生医療について厚生労働省は、優れた新薬や医療機器を世界に先駆けて実用化させる「先駆け審査指定制度」の対象に指定しており、通常約1年かかる治験後の承認審査は約半年に短縮される見込み。

 心筋再生医療は、岡山大病院新医療研究開発センターの王英正教授らのグループが11年に臨床研究をスタートさせた。左心室が小さく、血液を送り出すポンプ機能が弱くなる「左心低形成症候群」の小児を対象に血流を改善する手術の際、心臓の組織を採取。自己複製能力のある幹細胞を培養して約1カ月後に冠動脈内に注入する。

 同大病院によると、これまでの研究で子ども延べ41人が治療を受け、いずれも経過は良好。細胞を移植後1年でポンプ機能は平均7%向上し、3年間の追跡調査でも不整脈や細胞のがん化など副作用は確認されていないという。

 19日、治験に関する契約を岡山大病院、主導するノーリツ鋼機のグループ会社「日本再生医療」(東京)が結んだ。王教授は「保険適用されれば標準医療となり、先天性心疾患の子どもたちを数多く救うことができる。ほかの心臓病に対する治療法の開発にも取り組みたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年05月19日 更新)

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