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倉敷中央病院・山形専院長に聞く 地域全体で完結する医療体制を

山形専院長

 実業家・大原孫三郎(1880~1943年)が、東洋一の病院を目指し、23年に創設した倉敷中央病院(倉敷市美和)。90年余りを経た現在、1日平均で入院約1070人、外来約2800人を受け入れる岡山県西部の急性期基幹病院として、地域に欠かせない存在になった。4月に就任した山形専院長(66)に、創設以来の理念を踏まえて目指す病院の姿や役割について聞いた。

 ―創設者の大原孫三郎は、「患者本位の医療」という理念を掲げた。どう実践していくのか。

 病院では、「患者本位」に加えて「全人医療」「高度先進医療」を理念の3本柱として日々の医療に取り組んでいる。患者さんに安全でより質の高い医療を提供するためには何が必要か、医師や看護師、事務スタッフなど全職員が一丸となって常に業務を見直し、改革に努めている。それが結果として表れたのが、今年3月に国際的な評価機関ジョイント・コミッション・インターナショナル(JCI)から受けた適合認定だ。

 ―JCIの認定を受けたのは中四国、近畿の医療機関では初めて。院長は審査を受けるためのリーダーも務めたが、審査の基準は厳しかったのではないか。

 国内では18施設が取得しているが、首都圏に集中しているのが現状。審査項目は1146に上り、治療やケアの質、防災、感染予防、施設管理など多岐にわたる。業務委託する外部業者を含めたオール倉敷中央病院が評価の対象となった。だからこそ、価値がある認定だと思う。

 ―取得へ向けた取り組みを通じて、病院として得るものも多かったのでは。

 正直なところかなりの負担も伴い、最初は職員の間にも「何でここまで」という戸惑いもあったと思う。だが次第に業務の枠を超えた一体感が生まれ、「患者さんが第一」という気持ちを再度共有できたことは大きい。今回の経験を生かし、患者さんの目線での安全・安心が文化となる組織を目指したい。

 ―地域の他の医療機関との連携にはどう取り組むか。

 私の専門は脳神経外科だが、この病院に赴任したころ、症状が安定した脳卒中患者の転院受け入れに課題があると感じていた。まずは、信頼関係の構築が必要と考え、時間を掛けて地域の医療機関を訪問した。多くの医師と会って話すことで、相互理解が進み、連携もスムーズになった。「患者さんのために」という思いは、すべての医療機関に共通したもの。回復期や療養期、自宅に帰ってからのフォローなど、地域全体で完結する医療体制の実現に向け、これからもしっかりコミュニケーションに努める。

 ―高齢化が進む中、健康寿命の維持や介護予防も重要だ。医療機関として果たす役割をどう考えているか。

 この病院が発起人となり、倉敷市を中心とした県南18病院の連携で、市民向け医療講座「わが街健康プロジェクト。」を展開している。市民に医療機関と上手に付き合い、病気の予防と健康維持に努めてもらうのが狙い。「倒れた人をどう救うか」も大事だが、「倒れるのをどう防ぐか」にも力を入れなくてはならない。予防や異変の早期発見に向けた知識の提供、啓発も医療機関の大切な役割だ。地域のため、住民のため、医療機関としてどうあるべきか。常に利用者の立場で考えることを忘れず、信頼される病院であり続けたい。

 やまがた・せん 1975年、金沢大医学部卒。国立循環器病センター、滋賀県立成人病センターなどでの勤務を経て、96年に倉敷中央病院脳神経外科主任部長、2008年から副院長。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳神経外科救急学会評議員。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年05月26日 更新)

タグ: 倉敷中央病院

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