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(3)心理的支援Ⅱ~手術前後 おおもと病院総看護師長 大久保茂美

おおもと病院総看護師長 大久保茂美

気持ちに配慮しながら

 手術日が決定すると、それまでの間に手術に必要な検査や入院の準備を行うことになります。当院では「早くしてもらいたい」と希望される方で、手術前の薬物療法を行わない場合には、診断されてから入院までが2週間前後という状況です。診断から手術まであわただしく過ごすことになりますが、「忙しくしていたのでその間いろいろ考えなくてよかった」という方も意外と多く、現状に対処することで気持ちが落ち着くということもあるのかもしれません。

 ただ、診断後の1~2週間は不安が強くストレス症状など抱えている方も多い時期なので、医師や看護師から手術や入院の説明を聞いても頭に入らないということがあります。手術の準備や手術前後の経過説明など限られた時間で行うことは多いのですが、患者さんの気持ちに配慮して対応をすることは大切なことです。

 かかわる看護師は患者さんの心理的状況に気を配りながら、情報を集めて必要なケアを提供するという技術と経験が必要です。もし手術や手術方法が納得できていない、迷いがある場合などは、再度医師と相談できるように調整することも必要になります。

 手術前に不安を口にされない方も、手術が終わると表情が穏やかに変わり、「これが普段の○○さんなんだ」「やっぱり緊張されていたんだな」ということを何度も経験しました。手術翌日には、ほとんどの方が歩いてトイレに行き、普通に食事ができます。大部屋で手術後の方が元気に話をする姿を目にして、手術前の患者さんが安心されるということもあります。不安や緊張のある手術前の患者さんにとって、医療者がどんなに説明するよりも効果的です。

退院に向けて

 退院後に、「入院中は先生や看護師さんもそばにいて心配なことはいつでも聞けるし、他の患者さんとも話ができて良かったのに、退院した途端一人ですごく不安になった」と言われた方がいました。実際に生活してみて直面する問題もあり、退院後はそれを自分で対処しなければなりません。そのために、入院中に退院後の生活に合わせた情報を提供する必要があります。

 乳がんの手術は、手術方法によっても違いがありますが、7日前後ぐらいの入院期間で治療を行います。短い入院期間ですが、日常生活での注意や治療の副作用への対処方法など、生活をイメージして「何が心配か」「どのようにすれば良いか」をご本人と一緒に考えることができると良いと思います。そして退院後にも相談ができるように、病院への連絡方法を伝えておくことも必要です。

 「誰かに話を聞いてもらう」ということは大事なことです。周囲の方に気持ちを伝えることができると良いですが、「心配をかけたくない」「家族の前では元気でないといけない」など、家族を思って病気のことを話せないこともあります。また、現在は入院期間が短いため、入院中からの患者さん同士の交流が以前のようにはできにくくなっています。

 当院では、患者会(当院で治療・通院されている方を対象に)を定期的に開いています。患者会ではお互いの経験や悩みを話すこと、同じ経験をした方からの話を聞くことができます。当院の患者会は、おおもと会とピンクリボンの会という二つがあります。

 おおもと会に参加されるのは手術後間もない方から30年以上経過した方まで幅広く、開催は1年1回ですが、お互いに元気を分け合い、1年のパワーを充電するような会です。そして、ピンクリボンの会は、3カ月に1回行っています。少人数で行っているので気負わずにゆっくり話ができること、院内で開催しているので入院中や治療中の方も参加できるということがあります。個人での相談には、乳がん看護認定看護師による「看護相談」も予約制で行っています。

◇ おおもと病院(086―241―6888)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年06月06日 更新)

タグ: がん女性おおもと病院

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