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薬による眠気に注意しましょう 倉敷平成病院 薬剤部部長 市川大介

市川大介薬剤部部長

 最近は年をとったせいか、食後に眠気に誘われることが多くなりました。

 大阪・梅田の繁華街で今年2月、乗用車が暴走し、多数が死傷した事故がありました。この事故の原因は運転した人の病気で、「心タンポナーデ」という大動脈解離で染み出した血液により心臓の機能が損なわれたこととされたようです。ただ、最近はこのような自動車事故が起こったときは、必ず最初に薬物による影響が疑われます。

 2013年に、厚生労働省から「添付文書の使用上の注意に自動車運転等の禁止等の記載がある医薬品を処方又は調剤する際は、医師又は薬剤師からの患者に対する注意喚起の説明を徹底させること」との通知が出されました。

 当院でも、自動車運転の注意が記載されている薬剤を服用される場合には説明をしています。眠気、めまい、ふらつき、意識障害を引き起こすものが該当しますが、大別すると(1)「運転させない」ように説明する薬と、(2)「注意して運転する」ように説明する薬があります。

 特に(1)「運転させない」ように説明する代表的な薬を挙げてみます。睡眠薬、抗不安薬、抗ヒスタミン薬、総合感冒薬、麻薬などの多くが該当します。薬を飲んだ後に眠くなるという経験をされた方は多いかと思います。また、病気そのものに対しても自動車運転に制限が必要ですが、脳神経系疾患の治療に使われる薬(抗てんかん薬、抗うつ薬、抗精神病薬、パーキンソン病治療薬、認知症治療薬、偏頭痛治療薬)の多くも該当します。

 それ以外では、痛み止めの「ジクロフェナク(ボルタレン)」「トラマドール(トラムセット、トラマール)」「メロキシカム(モービック)」「プレガバリン(リリカ)」「チザニジン(テルネリン)」、消化器症状を治療する「ブチルスコポラミン(ブスコパン)」「メトクロプラミド(プリンペラン)」、咳(せき)止めの「デキストロメトルファン(メジコン)」、抗生剤の「ミノサイクリン(ミノマイシン)」、禁煙治療薬の「バレニクリン(チャンピックス)」、頻尿治療薬「プロピベリン(バップフォー)」、心臓薬「カルベジロール(アーチスト)」「硝酸イソソルビド(ニトロール)」「一硝酸イソソルビド(アイトロール)」「シベンゾリン(シベノール)」などがあります。

 また、緑内障点眼薬でも、点眼後の一時的な霧視(ものが見えにくい症状)が治まってから運転するように注意するものがあります。抗ヒスタミン剤では「ケトチフェン(ザジテン)」「レボカバスチン(リボスチン)」など「点鼻薬」でも注意喚起があります。【かっこ内は代表的な製品名】

 また、(2)「注意して運転する」ように説明する薬の中には、血圧を下げる薬、糖尿病治療薬なども含まれます。自分の薬は大丈夫か心配な方は、薬剤師さんに尋ねてみてください。

 もちろん、自動車は生活に欠かせない必需品で「運転をしないようにと言われても…」という方も多いことと思います。ただし、薬物による意識障害で自動車が集団登校の列に突っ込むなど、悲惨な事故が起こっているのも事実です。薬を服用されている一人ひとりの裁量に委ねられるものですが、薬物治療の充実してきた現代では、気をつけなければならない社会問題です。

◇ 倉敷平成病院(086―427―1111)

 いちかわ・だいすけ 鳥取県立倉吉東高、岡山大薬学部卒。同大大学院薬学研究科修士課程修了。万有製薬(現MSD製薬)を経て2006年11月から倉敷平成病院勤務。日本静脈経腸栄養学会認定NST専門療法士、日本糖尿病療養指導士、日本薬剤師研修センター認定実務実習指導薬剤師、日本病院薬剤師会認定指導薬剤師。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年06月06日 更新)

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