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悪性脳腫瘍治療に抗うつ剤が効果 岡山大大学院研究グループ確認

道上宏之助教

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の道上宏之助教、松井秀樹教授らの研究グループは、抗うつ薬の一つが、悪性脳腫瘍の治療にも活用できる可能性を見いだした。がんが周囲へ拡大するのを抑制するとともに生存期間の延長も認められた。

 新しい抗がん剤開発には莫大(ばくだい)な費用と期間がかかることから、既存薬が持つ別の効能に着目。短期間、低予算で、副作用の少ない新しい治療薬を生み出す手法を用いた。

 悪性脳腫瘍はがん細胞が健康な細胞に入り込む浸潤性が高い上、他のがんに比べて抗がん剤による治療が難しいケースが多く、中でも悪性度の高い「膠芽腫(こうがしゅ)」は5年生存率が数%と予後が悪い。

 そこでグループは、がん細胞が移動する際に過剰に現れるタンパク質「糸状アクチン」に注目。糸状アクチンになるのを阻害できれば、浸潤性を抑えられると考え、抗うつ薬や頭痛薬、抗不安薬など18種類で効果を調べた。

 この中の一般的な抗うつ剤の一つが、効率的に糸状アクチンの形成をブロックすることを突き止めた。マウスの実験でもがん細胞の広がりが抑えられることを確認し、生存期間も約15%延びた。

 道上助教は「この抗うつ剤のようながん細胞の浸潤を抑制するタイプと、がん細胞そのものを攻撃する抗がん剤とを併用することで治療効果を高められる可能性がある。臨床試験に向けた準備を進めたい」と話している。成果は英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年06月19日 更新)

タグ: がん岡山大学病院

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