文字 

岡山大、赤痢ワクチン開発を加速 インド拠点に安全安価な製品研究

三好伸一教授

 岡山大の海外研究拠点「インド感染症共同研究センター」(コルカタ市)が、赤痢を予防するワクチンの開発に向けた研究を続けている。6種類の赤痢菌を混ぜた試作品の効果を動物実験で確認しており、安全で安価な製品作りを目指し、取り組みを加速させる方針だ。

 赤痢は出血を伴う下痢を引き起こす感染症。死者は、国内では近年ほとんど報告されていないが、世界保健機関(WHO)などによると、世界では途上国を中心に年間60万人に上ると推計される。一方で実用化されたワクチンはなく、治療薬に耐性を持つ菌がまん延しているという。

 研究は大学院医歯薬学総合研究科の三好伸一教授(衛生薬学)らのグループが、赤痢菌の種類が多く研究に適したインドで2007年度に開始。加熱して感染力を失わせた菌を用いることで、生きた菌を使ったワクチンより安全性を高め、製造コストを抑える考え。注射器などを使わず、手軽に摂取できる経口タイプでの実用化を目指している。

 マウスやウサギを使ったこれまでの実験で、幅広い種類の菌を予防できるよう主要な6種類の菌による混合型のワクチンでも、1種類だけを使ったワクチンと比べて効果が落ちないことを確認。効果の持続期間も、混合型を4回投与したウサギの抗体検査では半年以上に及び、想定を満たすことも分かった。

 今後は、約50種類ある赤痢菌の全てについてワクチンでの活用が可能かどうかを検証。ヒトと同様に赤痢菌に感染するサルによる実験を行った後、インド政府に臨床研究について申請する計画。

 三好教授は「患者が少ない先進国で研究が進まない中、インドでの研究により、患者の経済的、肉体的な負担が少ない製品の開発を実現させたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年06月27日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ