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抗がん剤併用で治療効果が向上 岡山大開発「テロメライシン」

 岡山大の研究グループは、がん細胞だけを破壊する独自開発のウイルス製剤「テロメライシン」が、骨肉腫に対する抗がん剤治療の効果を高めることを突き止め、その仕組みを解明した。抗がん剤が効きにくい患者への新しい治療法につながると期待され、30日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツに論文が掲載された。

 大学院医歯薬学総合研究科の藤原俊義教授(消化器外科)、尾崎敏文教授(整形外科)らのグループ。岡山大が2002年に開発したテロメライシンの骨肉腫に対する治療効果を08年から研究し、がん細胞の増殖を抑える働きがあることを証明していた。

 今回は抗がん剤を併用した治療法について検討。ヒトの骨肉腫の細胞を用いて、抗がん剤単独とテロメライシンを併用した場合の治療効果を比べたところ併用した方が、がん細胞死が多かった。さらにテロメライシン投与により、「マイクロRNA―29」と呼ばれる細胞内の微小なリボ核酸が増え、がんの細胞死を抑制するタンパク質を減らしている仕組みを見いだした。マウスの実験でもテロメライシンと抗がん剤を併用した方が、がんが小さくなることを確認した。

 グループの岡山大病院新医療研究開発センターの田澤大助教は「がん細胞死を誘導する抗がん剤の効果を、テロメライシンが高めると考えられる。臨床研究へ向けた準備を進めたい」と話している。

 テロメライシンは、風邪ウイルスの一種アデノウイルスの遺伝子を組み換えたウイルス製剤。がん細胞だけで大量増殖し、細胞を破壊する一方、正常な細胞は傷つけない。岡山大発ベンチャーが米国で行った臨床試験で一定の効果や安全性が確認されている。岡山大病院でも食道がん患者に対する放射線治療を併用した臨床研究が進んでいる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年06月30日 更新)

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