文字 
  • ホーム
  • 津山中央病院
  • 市民公開講座「切らずに治す がん陽子線治療」 最新のがん治療 -陽子線治療-

市民公開講座「切らずに治す がん陽子線治療」 最新のがん治療 -陽子線治療-

わき・たかひろ 2004年、岡山大医学部卒。14年、岡山大学病院放射線科助教。同年、津山中央病院放射線科副部長に就任。16年から同院放射線治療センター副センター長を兼任。

 副作用が出にくいがんの放射線治療「陽子線治療」について理解を深める市民公開講座「切らずに治す がん陽子線治療」が6月4日、岡山市北区柳町の山陽新聞社さん太ホールで開かれた。中四国初のがん陽子線治療ができる施設を院内に整備した津山中央病院(津山市)の医師らが治療の効果などを紹介し、市民ら約300人が最新のがん治療について学んだ。

講演 津山中央病院 がん陽子線治療センターの概要
津山中央病院放射線科 脇隆博副部長


中四国唯一の拠点施設

 津山中央病院は4月28日に陽子線治療を開始。岡山大学と連携して「岡山大学・津山中央病院共同運用がん陽子線治療センター(TOP BEAM)」を運営している。当院と岡山大学病院が陽子線治療外来を開き、岡山大学の関連病院だけでなく、岡山県内や中四国の医療施設からも患者さんを受け入れる。兵庫県立粒子線医療センターとも連携する。

 現在、粒子線治療のできる施設は当院を含め全国各地に15施設。西日本の総合病院では当院だけだ(6月4日現在)。がん診療には多くの診療分野が関わる。歯科や薬剤、看護、リハビリも重要だし、糖尿病や心臓病なども患っている患者さんは、それらの治療も並行して行わなければならない。患者さんが抱える全ての病気を統合的に治療できるのが総合病院でがん治療を行うメリットだ。

陽子線治療とは

 当院の陽子線治療は6月4日現在、自由診療で前立腺がんと肝臓がんを受け入れている。7月1日に先進医療施設の認可を受け、肺(早期)や頭頸部、骨軟部のがん治療をスタート。9月をめどに肺(進行)と胆管がん、膵臓がん、転移性腫瘍も開始したい。小児がんについては一刻も早く受け入れができるよう準備を進めている。

 陽子線治療とは、陽子を光速の約70%まで加速して腫瘍にぶつけ、がん細胞を破壊する治療法だ。従来の放射線治療(X線治療)ではビームが病変を貫通するので、病変周辺にある正常な臓器にも広範囲に影響が及んでしまい、副作用につながる。

 一方で陽子線は人体に入ると、小さなエネルギーを周囲に与えながら進み、皮膚からある一定の深さで急激にエネルギーを放出して停止する。病変の深さや形に合わせてエネルギー放出のピークを持ってくることができる。またエネルギーが一定の深さで止まるので放射線に弱い臓器をよけることができる。病変のさらに深い場所にある正常な臓器を傷つけることがないので副作用が大きく抑えられる。

 陽子線治療の照射方法はブロードビームと積層原体照射、スポットスキャニングの3種類ある。最新のスポットスキャニングはビームを細かな点のようにして照射し、ほぼ周囲の正常臓器に影響がでないように治療ができる。当院では現在ブロードビームでの治療を行っているが、来年5、6月ごろをめどにスポットスキャニングを導入する予定だ。

◇ ◆ ◇

 がん統計(国立がん研究センター)によると、日本人の2人に1人はがんになる。そして日本人全体の3、4人に1人ががんで亡くなっている。岡山県の状況もほぼ全国の統計と同じだ。がんにならないのが一番だが、一方で誰がかかってもおかしくないと認識してほしい。そして、いろいろながん治療の選択肢の中に陽子線治療があることを覚えておいてほしい。

 陽子線治療に関する詳しい説明を当センター(TOP BEAM)のホームページ(http://top.tch.or.jp)に掲載。また問い合わせも同ホームページや電話(0868(21)8150)で受け付けている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年07月03日 更新)

タグ: 津山中央病院

ページトップへ

ページトップへ